F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のジャン・トッド会長も、来月に予定されているF1ロシアGP(10月12日決勝)の初開催実現に向けて不安を抱いているようだ。
これは、FIAでトッドと共に働く元ラリー・ドライバーのアリ・バタネンが示唆したものだ。バタネンは2009年のFIA会長選挙にトッドの対抗馬として出馬し敗北したものの、その後はトッドの右腕的存在となっている。
現在、ロシアや、F1最高責任者のバーニー・エクレストンが「すごいやつ」だと評したウラジーミル・プーチン大統領が世界中のメディアをにぎわせる状況が続いている。プーチンがウクライナに対する攻撃的姿勢をますますエスカレートさせているためだ。
そんな中、『Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)』は今週、欧州連合が初開催となるF1ロシアGPを含むロシアでの主要なスポーツイベントのボイコットを勧告することを検討しているとも報じている。
『Telegraph(テレグラフ)』紙のF1担当記者であるダニエル・ジョンソンは、バタネンは、あまり表舞台に立つことのないトッドに代わって発言をする際には、その内容についてトッドと「事前によく確認した上で」行っていると考えている。つまり、バタネンのコメントは、トッドの考えを代弁するものでもあるという認識だ。
「もちろん、ジャンは私のコメントについて知っているよ。我々はそれに関して話をしたからね」
そう答えたバタネンは、次のように続けた。
「我々は友人同士なんだ。彼も私と同じような考えを持っていると思っているよ」
「彼はいろんなものに縛られているというのは確かだよ。私のほうが彼よりももっとおおっぴらに自由に発言できるだろうね」
F1の商業権を牛耳っているエクレストンは、プーチンとの間でレース契約を交わしており、一貫してロシアGP主催者との契約を実行する義務があること、そしてスポーツと政治を結び付けるべきではないことを主張している。
これに関し、バタネンは次のように語った。
「F1では政治とスポーツを結び付けるべきではないというのは常々言われてきていることだ。だがロシア政権はすでに政治とスポーツをあからさまに結び付けている。だから、我々としてもそれに反応しなくてはならないんだ」
「バーニー、そしてF1オーナーはレースをキャンセルしたほうがいいね」
西側諸国がさらに圧力を強めていることを受け、プーチンはここ数日核戦争の可能性もちらつかせるなど、現況はさらに悪化をたどっている。
かつて欧州議会議員を務めたこともあるバタネンは、さらに次のように続けた。
「これは第二次世界大戦以後においては未曾有の状況だよ」
「我々は、この流血を画策している政権を支持するのか? あるいは、これは正しいことではないと言うのか?」
そして、バタネンは次のように結んでいる。
「もし我々がロシアへ行けば、我々はメッセージを送ることになるだろう。我々は(ロシア政権のやっていることを)実質的に容認したものと受け取られることになる。明確な形ではないかもしれないが、我々がそうすることによって、今起こっていることを容認することになるんだ。なぜならそれは宣伝活動に使われてしまうからね」