F1第11戦ハンガリーGP決勝でメルセデスAMGのチームメート同士が激しい戦いを見せ、表面下でくすぶっていた関係に火がつきそうな情勢だ。
■【画像】暑い夏、熱いバトルで魅せたリカルドとアロンソが握手/F1ハンガリーGP
26日(土)の予選Q1でマシン後部から炎が吹き上がり、早々にサーキットを後にしたルイス・ハミルトンは帰り際、ニコ・ロズベルグとのあいだに横たわる14ポイント差が27日(日)の決勝で一気に20ポイント以上に膨れ上がるだろうと予想していた。
ところが決勝が終わってみると、逆に差は11ポイントに縮まった。トップで悠々とレースを制御していたロズベルグだが、時ならぬセーフティカー出動で展開は一変。ロズベルグの前に出る形となったハミルトンは再三にわたるチームの無線指示を無視、ロズベルグの先行を拒否した。
ハミルトンと異なる作戦に従って走っていたロズベルグは、「なぜ彼は僕を先に行かせない?」とチームに問いかける。
終盤は、ハミルトンがロズベルグをコース外に押し出すバトルとなった。このときハミルトンは無線で次のようにいっている。「ニコのためにアクセルは緩めないからね」
イギリス『BBC』ラジオのF1実況解説者で元F1ドライバーのアラン・マクニッシュは、次のように話す。「ふたりに何かあったときは、こっそりメルセデスAMGの会議室に忍び込んでみたいよ」
レース後、ロズベルグはきわめて紳士的な態度だったが、さすがに最終ラップの出来ごとは「カチンときた」と心境を打ち明けた。
モナコGP並みに両者の関係が崩壊したかに感じられる流れだが、今回、ハミルトンに味方する関係者は多い。
「レースをしているというのに、なぜ彼(ハミルトン)は速度を緩めなければならない?」と、チームの考えを疑問視するのはデビッド・クルサードだ。「チームの要求は厳しいと思う。むしろ不公平だ」
メルセデスAMGの総監督トト・ヴォルフはロズベルグと同じく、なぜハミルトンが明らかなチームオーダーを拒否したか理由を”分析”すると、努めて紳士的に話していた。
ロズベルグも同じく、ケンカするなら人のいないところでといった態度だ。
「内々で話し合う必要があるね。そうしたほうがいい」と、ロズベルグ。
表彰式でインタビューを担当したテレビ解説者のマーティン・ブランドルは、表彰台の裏でハミルトンは目に見えて「不機嫌」な表情だったとしている。チームオーダーを飲めば「ニコとのポイント差が広がってしまう」。従って指示の不服従は間違っていない。これがハミルトンの考え方だ。
彼はイギリス『Sky(スカイ)』に、次のように話す。「あのままでは彼に負けていた」
「ほんとうはあまりコメントしたくない。(チームオーダーには)正当な理由があるのだろう。でも僕自身にとって正しい決断をしてよかったと思っている」
「僕は自分のためにレースしているんだ。彼のためじゃない」
そんな争いをよそに今季2勝目を上げて喜色満面のダニエル・リカルドは、レッドブル1年目のシーズンを引き続き順調に過ごしている。2位はフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)だった。