メルセデスAMGが、「FRIC」システムを取り外したところで、それによって自分たちが不利になるようなことはないと主張。現在メルセデスAMGに次ぐチーム別ランキング2番手につけるレッドブルも、これによる大きな変化が起こることはないだろうと見ている。
現在話題に上っている「FRIC(フロント・アンド・リア・インターコネクテッド)」とは、前後のサスペンションを油圧ケーブルなどで繋いで相互的に制御し、今は禁止されているアクティブサスペンションに似た効果を発生させるシステムだ。現在はほとんどのチームがその概念を導入しているとされている。
そして、その効果を最も大きく得ているのが、今季のF1を支配するメルセデスAMGと、チャンピオンチームのレッドブルだと考えられている。
F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、現時点ではこのシステムを正式に禁止しているわけではないが、F1競技委員長であるチャーリー・ホワイティングが「合法性に疑問がある」としたことで、今後これを利用し続けた場合には、その利用をやめたチームから異議申し立てが行われることも想定される状況だ。
そうした状況のもと、メルセデスAMGやレッドブル、そしてそのほかのチームも来週末に開催されるF1ドイツGP(20日決勝)にはこの「FRIC」を取り外すことになると見られている。
ドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』は、とりわけメルセデスAMGの今季型車であるW05ハイブリッドに装着されたFRICは複雑で、大きな効果を上げているとともに、ピレリのタイヤの温度を最適な範囲に保つことにおいても完ぺきな調和が図られていると指摘。
「ライバルたちは、今回の(FRICの)禁止により、シルバーアロー(メルセデスのレーシングカーの愛称)は1周あたり最大コンマ5秒ほど遅くなるのではないかと考えている」、と記者のビアンカ・ガーロフとラルフ・バッハは書いている。
だが、メルセデスAMGのニキ・ラウダ(非常勤会長)は「それほどの変化はないよ」と主張し、次のように続けた。
「その一方で、なぜこのシステムがこれまで1年半ほど合法的なものだとされていながら、今になって突然禁止されることになったのかを考える必要があるね」
ラウダが言わんとするところは、FIAが2014年シーズンを観客やテレビ視聴者にとってもっとわくわくするようなものとするために、ライバルチームたちがメルセデスAMGに追いつくことができるように「作為的」な行動に出たものではないかということだ。
そして、『Auto Bild(アウト・ビルト)』では、事実メルセデスAMGとレッドブルの主要なライバルであるマクラーレンとフェラーリが、今回ホワイティングがイギリスGP(第9戦)の後で各チームにFRICに関する書簡を送る数か月前から、このシステムに関するロビー活動をFIAとの間に展開していたとしている。
「マクラーレンとフェラーリがそういう動きをしたのは明らかだ」と記者のガーロフとバッハは断言している。
メルセデスAMG同様、今後抗議の対象となることを恐れ、ドイツGPの前にFRICを取り外さなければならない状況を迎えたレッドブルも困惑は隠せない。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、「ここ何年かの間に、我々はしばしばそれまでは合法だとされていたものをやり直さなくてはならないことがあった」と語った。
だが、マルコもメルセデスAMG同様、FRICの禁止による影響はそれほど受けないだろうと次のように付け加えている。
「今、このシステムについても同じことが起きている。だが、我々が被(こうむ)る不利益は、ほかのいくつかのチームほどには大きくないと思うよ」