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FIAの介入で、F1勢力図に異変は起こるのか?

2014年07月10日(木)19:30 pm

9日(水)にシルバーストン・サーキットで行われたF1公式テストに参加したルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)だが、セッションが終わるとメディアに一言のコメントも残さず、サーキットを後にしていた。

恐らく、大きな論議を呼ぶこととなった「ニコ・ロズベルグはドイツ人ではない」との発言問題を避けて通るようにとのアドバイスを受けていたのかもしれない。

だが、ハミルトンが口をつぐんだ背景には別の問題があったかもしれない。つまり、メルセデスAMGのクルマが一気にその勢力を失う可能性が出てきたということだ。

■FIAが非合法の疑いありとした「FRIC」システムとは?
このシルバーストンでのテスト直前に、FIA(国際自動車連盟)のF1競技委員長であるチャーリー・ホワイティングがF1チームあてに書簡を送り、禁止されているアクティブ・サスペンションと似た効果を出す「FRIC」と呼ばれるシステムが非合法だと見なされる可能性が高いことを通知。F1チームに大きな衝撃を与えていた。

「フロント・アンド・リア・インターコネクテッド」を意味する「FRIC」とは、前後のサスペンションを相互的に制御するシステムであり、もともとは昨年メルセデスAMGが本格的に実用化していたものだった。だが、今季はすべてのチームがこのシステムを採用していると考えられている。

今回ホワイティングが発した警告について尋ねられたマクラーレンのエリック・ブーリエ(レーシングディレクター)は、「これには驚かされたよ。どこかのチームが起こした行動ではないからね」と語り、次のように付け加えた。

「これはFIAが起こした行動なんだ」

このブーリエのコメント以前には、どこかのチームがホワイティングに対して苦情を上げたのではないかと想像した者もいたかもしれない。なぜなら、今季圧倒的な強さを誇るメルセデスAMGが、ほかのチームよりも大きくこの「FRIC」の恩恵を受けていると考えられているからだ。

マルシャのマックス・チルトン(マルシャ)は、シルバーストンでイギリスのテレビ局『Sky(スカイ)』に次のように語った。

「メルセデスAMGのシステムはすごく複雑だと聞いているよ。だから、彼らへの影響は大きいかもしれないね」

■現実的にはドイツGPからFRICは排除へ
いまのところ、FIAでは実際にこのシステムを正式に禁止すると発表しているわけではない。だが、F1の技術面における責任者であるホワイティングが警告を発した以上、理論的には来週末のドイツGP(20日決勝)においてもまだこのFRICを使い続けていた場合には、それに対してライバルチームから抗議を受けることになるだろう。

つまり、各チームとしてはそうした事態に陥ることを避けるために、自主的に「FRIC」を取り外すという選択肢しか残されていないのが現実だ。

チルトンは、さらに次のように続けている。

「僕たちとしても、それをはずした状態で何ができるかを試したほうがいいと考えたよ。それが禁止されるという想定のもとにね」

そのチルトンは、マルシャのクルマでは「FRIC」をはずした状態でも、それほど大きい違いは感じなかったと語っている。

だが、それはマルシャのシステムがほかのチームに比べてそれほど優れていないせいだとも考えられる。

■FRIC禁止による有利・不利は起こるのか?
ブーリエは次のように語った。

「いくつかのチームでは大きな効果を得ていたんじゃないかと思うよ。だからこそ、FIAがそのシステムの合法性に疑問を持ったんじゃないかな」

「私は、ほかのチームの設計の秘密は分からない。だが、ほとんどのチームにおいてはそれによって形勢が変わるほどではないと思っているよ」

「2、3のチームが大きな効果を得ているかもしれないし、そうしたチームでは当然ながら(前後のサスペンションが)つながれていない状態に戻すことは問題を抱えてしまうことになるかもしれないね」

■それでもメルセデスAMG優位は変わらない?
理屈の上では、この「FRIC」問題はメルセデスAMGのライバルたちにとってはいいニュースとなるだろうし、これまで圧倒的な強さを誇ってきたメルセデスAMGにとっては非常に悪いニュースとなるだろう。

レッドブルのセバスチャン・ベッテルは、『Speedweek(スピードウィーク)』に次のように語っている。

「FIAが通知してきたことで、もし何か変更が行われるとするなら、何台かのクルマがほかのクルマよりも大きな影響を受けるんじゃないかと推測することはできるね」

だが、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のミハエル・シュミット記者は、そうであってもメルセデスAMGが現在築いている大きな差が失われることはないと考えているようだ。シュミットは次のように書いている。

「メルセデスAMGは、いくつかアドバンテージを有しているものをあきらめなくてはならないかもしれない。だが、現在ライバルたちにつけている差は非常に大きいものであり、それによってシルバーアロー(メルセデスのレースカーの愛称)が問題を抱えるようなことはないだろう。特に、レッドブルも同様に優秀なシステムを持っているだけにね」

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