F1オーストリアGP(22日21時決勝スタート)において、今季序盤には圧倒的な強さを誇っていたメルセデスAMGに警報ベルが鳴り響いている。
■【結果】ウィリアムズ1-2!F1オーストリアGP予選のタイム、ギャップ
だが、その兆しはすでに前戦カナダGP(第8戦)でもかいま見えていた。ルイス・ハミルトンがリタイアに終わった開幕戦のオーストラリアGPを除けば、第2戦のマレーシアから第6戦モナコまで5レース連続で決勝1-2フィニッシュを飾り、向かうところ敵なしの状態だったメルセデスAMG。
だが、カナダでは両方のクルマのパワーユニットに冷却トラブルが発生。ハミルトンが今季2度目のリタイアを喫すると、ニコ・ロズベルグも終盤にダニエル・リカルド(レッドブル)にかわされ、今季初めて優勝をほかのチームにさらわれていた。
メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、21日(土)の予選が行われる前に、カナダで発生したトラブルがまだ完全に修復しきれていないことを認めていた。
その後、オーストリアGP予選では、ウィリアムズのフェリペ・マッサとバルテリ・ボッタスに最前列を独占されるという結果を迎えたメルセデスAMGでは、同じメルセデスエンジンを搭載するウィリアムズがどうやって2台ともそのようなパフォーマンスを発揮できたのかを熟考せざると得ない状態となっている。
■まだ自分たちが最速だと主張するロズベルグ
オーストリアGP決勝を3番グリッドからスタートすることになったポイントリーダーのロズベルグは、『Speedweek(スピードウィーク)』に次のように語った。
「まだ僕たちのほうがトップだよ」
「今回は、僕たちのアドバンテージはいつもほど大きくはなかった。でも、このサーキットがウィリアムズにはよく合っているんだと思う。それに、彼らは予選に合わせたセットアップをしてきたんだと考えているんだ」
「サーキット上では、僕たちのクルマがまだ最速だという自信があるよ」とロズベルグは締めくくっている。
ジェンソン・バトン(マクラーレン)もこのロズベルグの発言に賛成のようだ。バトンは予選後、「明日(決勝)はまた違った展開になると思うね」と語った。
ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)も同意見だ。
「ウィリアムズは今週末ずっとトップ5に入っていた。彼らは速いよ。でも、決勝ではそううまくはいかないんじゃないかと思うよ」、とヒュルケンベルグは『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に語っている。
■さらに増大するハミルトンのプレッシャー
だが、メルセデスAMGが抱えている問題はほかにもある。モナコの予選で怒りを爆発させていたハミルトンだが、続くカナダでもリタイアに終わってロズベルグとのポイント差が22ポイントに開いたことで、かなり大きなプレッシャーを感じ始めていると考えている者が多い。
ハミルトンは予選Q3で大きくクルマをスピンさせ、レッドブルリンクで行われるオーストリアGP決勝は9番グリッドからスタートすることになる。ハミルトンにとって最前列以外のポジションからレースをスタートするのは今シーズン初めてのことだ。
メルセデスAMGの非常勤会長であるニキ・ラウダは、21日(土)の予選後、『APA通信』に「ミスが起きてしまったよ。彼(ハミルトン)は今夜はぐっすり眠れそうにないね」と語ると、『Bild(ビルト)』紙にも、「明日、彼が1周目をうまく切り抜けて生き残ってくれることを願うよ」と付け加えている。
■いよいよチームオーダーの発令も?
だが、メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、もっと大きな心配を抱えているようだ。ヴォルフは、今季型車「W05ハイブリッド」が圧倒的な強さを誇っていることを踏まえれば、レースに対するチームの姿勢に関して抜本的な見直しが必要なのではないかと考え始めている。
オーストリア出身のヴォルフは次のように語った。
「我々は依然として今季のF1タイトル争いをリードしているし、クルマもまだ速い」
「だが、我々は学んだよ。我々のドライバー同士による戦いだけがすべてじゃなく、ほかにも強いチームがあるんだということをね」
ヴォルフが言わんとしているところは、ロズベルグとハミルトンがお互いのことだけを気にしていたばかりに、気が付けば、何台ものライバルたちに先を越されてしまったということだろう。
ヴォルフは、メルセデスAMGとしての今後レースへの取り組み方について検討を行っていくことになると認めている。
「多くのプレッシャーがかかる非常に競争的な環境となっている。我々は全体としてのシステムをよく考える必要があるね」、とヴォルフは語った。