16日(月)に、元F1ドライバーのミハエル・シューマッハが、もはやこん睡状態にはないとの公式声明が発表されたが、それに対して医学界からもさまざまなコメントが出てきている。
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声明によれば、シューマッハは、ほぼ6か月に及んだこん睡状態から目覚め、すでにこれまで収容されていたグルノーブルの病院を離れ、「長期間に及ぶリハビリテーション」に移るとされている。
その声明には記されていなかったものの、シューマッハはスイスの自宅から車で30分ほどのところにあるローザンヌ大学病院に転院したと報じられており、病院もその事実を認めている。
その後、メディアは、この件に関する医師たちのコメントを多く取り上げて紹介している。
■リハビリ開始に期待する声
オックスフォード大学の神経外科教授であるティプ・アジズ医師は、『AP通信』に対し、かつて7度のF1タイトルに輝いたシューマッハが「長期間の副次的作用」を起こしているのは明らかだとし、次のように語っている。
「リハビリテーションによって、彼(シューマッハ)が障害に立ち向かい、可能な限りの生活機能を取り戻せるようトレーニングを行うことになるだろう」
「もし彼が脳に損傷を受けていた場合は、脳機能の喪失に起因する四肢の虚弱を抱えているかもしれない。ひょっとすれば、話すことや嚥下(えんげ)機能にも問題を抱えているかもしれない」
また、フランスのテレビ局『BFMTV』の医療解説者を務めるアラン・デュカルドネ医師は、今回のニュースは「大きな前進」だと語っている。なぜならば、これまでの情報によれば、少なくともシューマッハはまだある程度こん睡状態が続いていたと考えられるためだ。
「現在では、完全に神経学的な評価ができるし、実際に何が起こったのかを知ることができる」
そう語ったデュカルドネは、次のように付け加えた。
「そうした情報に基づいて、適切なリハビリテーションが開始されるだろう」
『Bild(ビルト)』紙によれば、シューマッハはまだ話すことはできておらず、リハビリも「数年とまではいかなくとも、数か月を要することになるかもしれない」という。
「だが、希望が持てる部分もある」
『Telegraph(テレグラフ)』にそう語ったのは、イギリスのリハビリコンサルタントであるガネシュ・バビカト医師だ。
「彼は身体的には健康であり、比較的まだ若い。だから、それほど(回復を妨げるような)既往症は抱えていなかったと推測している」とバビカト医師は語った。
だが、ほかの医師たちはそれほど楽観的ではない。
■シューマッハの回復に悲観的なコメントも
ドイツの神経外科医であるアンドレアス・ピンゲルは、『Focus(フォーカス)』に対し、シューマッハのような状態に置かれた患者の場合、「耐えられる程度の障害」にまで回復できるのは「わずか10~30パーセントに限られる」と語っている。
また、ドイツ神経学会の会長であるアンドレアス・フェルベルト会長は、シューマッハは現在「こん睡状態ではないものの、意識はない」状態かもしれず、最終的には「回復の見込みのない植物状態」となるかもしれないとの見解を示している。
だが、『Bild(ビルト)』紙は、シューマッハが彼の家族とコミュニケーションをとっていると報じていた。これについてフィンランドの神経外科医であるミカ・ニエメラは『MTV3』に対し、「我々はその“コミュニケーション”が具体的にどういうことを指しているのかが分からないんだ。目が開いていたからといって必ずしもコミュニケーションがとれるとは限らないからね」と語り、さらに次のように続けた。
「悲観的にはなりたくないし、彼が回復することを本当に望んでいる。だが、もしこれまでに提供されている情報が正確なものであるとすれば、その場合、回復のチャンスはかなり低いだろうね」
「彼が5か月半もICU(集中治療室)にいたのであれば、外傷の程度は著しかったはずだ。彼は多分、常に介護が必要な状況だろう」、とニエメラは付け加えた。
フィンランドのタンペレ大学において神経学部長を務めるヘイキ・ヌミネン医師は、『Turun Sanomat(トゥルン・サノマット)』紙に対し、「回復の見込みはわずかながら以前よりもよくなっているようだ」と語ったものの、次のように続けている。
「だが、彼の今後の機能がどういう状態になるのかをコメントすることはできない」
ハンブルグ病院のハインツペーター・モエク教授は、シューマッハが現在どこまで回復しているのかは分からないとしつつも、シューマッハはいずれにしても「恐らくは、飲み込むこと、動くこと、歩くこと、話すこと、それらすべてを再び学習する必要があるだろう。それは非常に多くの小さなステップを積み重ねる、非常に長く、忍耐を伴う過程となるだろう」としている。
シューマッハが回復できる見込みはあるかと尋ねられたモエクは、「現時点では誰にも分からない。基本的に、不可能だということはない。だが、少なくとも以前と同じ状態に戻ることは望めないだろう」と答えている。
このように医学界の見解は当然のことながら慎重だが、執刀医は全力でシューマッハを救った。世界中がシューマッハの回復を喜んでいるのは間違いない。