メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフが、チームの目標達成のためには、今後チームオーダーを発令する可能性がないわけではないと語った。
先週末のF1カナダGP(第7戦)決勝では、今季ここまで圧倒的な強さを誇っていたメルセデスAMGのクルマ2台にトラブルが発生。ニコ・ロズベルグはなんとか2位でゴールまでたどりついたものの、チームメートのルイス・ハミルトンはブレーキトラブルを併発してリタイアに終わっている。
こうした予期せぬトラブルを招いた要因のひとつに、メルセデスAMGのチームメート同士がお互いに激しく戦い合っていたことがあるのではないかとの見方をする者もいる。あらかじめチームオーダーを発令し、お互いに競わせることなくもっとスピードを下げて走行させていれば、こうしたトラブルにつながらず、カナダでも1-2フィニッシュができていたのではないかという考えだ。
元F1ドライバーのデビッド・クルサードは今週、1998年に自分が置かれていた状況に言及。その年、マクラーレンではチームオーダーを出すことでドライバーたちにスピードを落とさせ、信頼性に不安を抱えていたクルマでシーズン序盤を支配しながら乗り切っていた。
だが、ヴォルフは、先週末のカナダで発生した信頼性の問題が、ハミルトンとロズベルグがお互いに激しく戦い合うためにクルマを酷使し過ぎたからではないかとの説を否定し、次のように語った。
「あのトラブルは、もし彼らがスピードを落として走っていたとしても起こっていただろう」
「ドライバーたちには、ブレーキバランスを変え、もっと慎重にブレーキングをすることでその問題に対応するよう伝えていた。彼らは我々の指示の通りにやっていたよ」
『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』にそう語ったヴォルフは、次のように付け加えた。
「ルイスに起こったことがニコに起こらなかったのは、単に運がよかっただけだ」
それにもかかわらず、ヴォルフは今回の問題は、メルセデスAMGに対して「今後も2人に自由にレースを続けさせるかどうかという疑問」を与えることになったと認めている。
ヴォルフは、スペインの『AS』紙に対し、「我々は、それによってメルセデスAMGが弱体化することがない限り、彼らに競わせ続けるつもりだ」と語り、さらに次のように続けた。
「我々はひとつのF1チームであり、2人のF1ドライバーのためのチームではない。我々は全員が同じ方向を目指しているし、同じ目標を掲げているんだ。それは、F1タイトルを取るということだ」
「現時点では、彼らは自由にレースを続けられる。だが、この状況はいつ何時変わるかもしれない。動的なプロセスが進行しているのだからね」、とヴォルフは締めくくっている。