2014年シーズンはここまでメルセデスAMG勢がほかのチームを寄せ付けず、圧倒的な強さを誇っている。その最強のクルマに乗るニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンも、これからの一騎打ちに向けて準備を整えつつあるようだ。
現時点においては、ハミルトンのほうが優勢だ。ハミルトンは第2戦から前戦スペインGP(第5戦)まで4連勝を飾っている。そして、すでにハミルトンは明らかにロズベルグに対する心理戦も始めている。
ハミルトンは最近モナコで行われたF1公式サイトのインタビューにおいて、ロズベルグは裕福な環境で育ってきており、自分のほうが勝利に対する執念が強いと語っていた。
だが、現時点において、ロズベルグに動じる気配はない。
「ほかのスポーツ同様に、精神的な要素があるのは確かだよ」
ロズベルグは、『Frankfurter Allgemeine Zeitung(フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング)』にそう語り始めた。
「ミハエル・シューマッハはこうした心理戦に非常に長(た)けていたよ。だから、彼から学べたのはとても興味深いことだった。かなりのことを学ばせてもらったよ」
ハミルトンがメルセデスAMGに加わる以前、2010年から3年にわたってチームメートであった7度のF1タイトル獲得を誇るシューマッハのことを引き合いに出したロズベルグは、次のように付け加えた。
「でも、ルイスと僕の間にはまだ心理的な戦いが始まっているというほどでもないよ。まだコース上での戦いのほうが大きいね」
ロズベルグは、ハミルトンとのコース上でのホイール・トゥ・ホイールの戦いにも十分に渡り合えると考えているようだ。
「ルイスが勝ち続けている。それは明確な事実だ」
そう話したロズベルグは、次のように続けた。
「スポーツでは流れが一方に傾くようなことがよくあるからね。でも、いずれ振り子は反対側のほうへ振り戻されてくるものさ」
「僕はまったく自信を失ったりはしていないよ。ここまでの3レースで自分がどれだけ速かったかが分かっているからね」
「それにもうひとつ、F1タイトルを取るには一貫性が重要なんだ。僕は今年すべてのレースで表彰台に上っている。これはほかには誰ひとりとして達成していないことだよ」
まだ2人の間に公然と戦いが繰り広げられているわけではないものの、目立たない部分においてはすでにかけひきが始まっているのは確かだ。
例えば、ロズベルグは、積極的にハミルトンの手助けをするようなことはないと認めている。
「僕は彼のところへ行って、『ねえルイス、こうするのが一番いいよ!』などと言ったりはしないよ。バルセロナ(スペインGP/第5戦)では、ディファレンシャルのセットアップをうまく行う方法を見つけたんだ。そのデータを利用することも可能だった。でも彼はそれを自分自身で見つけるしかなかったよ」
さらに、ロズベルグは、自分がハミルトンの性格をよく知っていることが有利につながるだろうと考えている。
「ほとんど毎日のように、彼は昔と同じなんだなと気付くことがあるよ」
かつてカート競技でもチームメートだったことがある少年時代のことを思い出しながら、ロズベルグは続けた。
「ルイスの強みも弱みも変わっていないよ。彼はコース上では素晴らしく速い。でも、何かうまくいかないことがあるとすぐに折れてしまうんだ」
「どうすれば彼に勝てるのかは分かっているよ。すべては(以前と)同じだし、そのことで僕は少しやりやすくなるね」
だが、かつてのカート時代に勝利を収めたのは、ハミルトンのほうだった。
だが、ロズベルグはそのことは関係ないと次のように続けた。
「F1はカートとは比べ物にならないよ。すごく技術的に高いし、僕はセットアップやデータ分析にもすごく興味を持っている」
「僕は、そういうところからほかのドライバーたちより有利になる点を見つけることがものすごく楽しいんだ。F1では確かに運転技術も必要さ。でも、頭を使うことも必要なんだ」、とロズベルグは締めくくっている。