ドライビングを楽しめなくなったら、自分にとってのF1はおしまい。このように話すのはジェンソン・バトン(マクラーレン)だ。
いまマクラーレンが置かれている状況が愉快でも何でもないのは、彼もはっきりと口にしている。
「ハッピーなのは、ただ1チームだけだよ」と、バトン。もちろんメルセデスAMGのことだ。
2009年にブラウンGP(現メルセデスAMG)で世界チャンピオンになったバトンも今は34歳。マクラーレンとの契約は今年限りだ。しかし、決してF1ドライバーの仕事が楽しくないわけではないという。
「今もかなりイケてる職業だと思うよ」と、バルセロナで『Express(エクスプレス)』紙に語るバトン。
「逆にイケてないのは、調子が悪い理由をインタビューで何とか説明しなきゃならないことだ」。F1第5戦スペインGP予選では、マクラーレンでかつてチームメートだったルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)から2秒以上離されて8番手のタイムだった。
バトンによるとその他の仕事、例えば技術陣との作業やドライビングは今も「楽しい」という。
「ただ、タイムを目にしたとき胸がチクッと痛むよね」と、心情を吐露するバトン。
「運転が今までみたいに楽しくなくなったら、それが引き際だ。そう思うのは、もしかしたら今後も速くなりそうにないマシンを運転しているせいかも」
「できれば、そうならないことを願うよ。希望としては、最高の形でキャリアを締めくくりたい」
F1以外にバトンが傾ける情熱といえば、フィットネスだ。彼は鉄人レースの常連で、世界でも指折りのアスリートたちを相手に戦っている。
また彼は、常に古き良き最速F1の時代に思いを馳せるタイプのドライバーでもある。当時に比べて今年のスペインGPといえば、サポートレースのGP2が余裕でF1の予選タイムをクリアしてしまうのが現実だ。
さらにバトンは、新しくできたラリークロスの世界選手権にも注目している。今年亡くなった父のジョン・バトンが生前、こよなく愛したレースだ。
「ジャック(ビルヌーブ:ラリークロスに参戦中)のコメントを読んだところ、他のどのカテゴリーもマシンのスピードを抑えるのに必死だっていうのに、ラリークロスだけはガチで本気らしいんだ。600馬力のモンスターマシンだってさ」
「僕もそんなレースに挑戦してみたいね。友だちや家族をちょっとしたモーターホームやキャラバンに乗せて、あちこち回るんだ。行った先々では、同じようにモータースポーツを楽しむ仲間たちとの触れ合いが待っている」
将来の話は置いておいて、今はまだF1をあきらめる段階ではない。
「僕は生来、すべてにおいて飽きっぽい性格でね。でもモータースポーツだけは、まだそんな気持ちにならない。これってすごいことだよ」と、バトン。
「でも、F1を止めたら多分ラリークロスに行くと思う」