F1に新たな「チームオーダー」の話題が誕生している。
20日(日)に開催されたF1中国GP決勝において、4年連続F1チャンピオンであるセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が、チームからチームメートのダニエル・リカルドを先に行かせるようにと告げられた際、「おあいにくさま」と答えていたことが報じられた。
だが、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、こうした反抗的な態度は別に大した問題ではないと考えているようだ。ホーナーは中国GP決勝後に、ドイツのテレビ局『RTL』に次のように語った。
「彼(ベッテル)は競技者なんだ。戦うことを望んでいるし、勝ちたいと望むものさ」
だが、チームからの無線の指示には反抗的な態度を示したものの、ベッテルはその後、背後からより速いスピードで追いついてきていたリカルドに不本意ながらも順位を譲っていたように見えた。
だが、ホーナーはそれを否定し、次のように続けた。
「彼は、自分がチームプレーヤーだということを示したんだ。彼は正しいことをしたよ」
ホーナーは、リカルドは自分とは違う戦略をとっていたのだと無線で連絡を受けたベッテルは素直にリカルドに先行させたと付け加えた。
事実、中国GP決勝では、ベッテルが3回ストップ作戦をとっていたのに対し、リカルドは2回のストップでレースを走りきる戦略をとっていた。
つまり、過去4年にわたってレッドブルの最強のF1カーによって圧倒的な力を見せつけていたベッテルだが、今年は単に新しいチームメートのスピードについていくのにてこずらされているということになる。
「(チームオーダーより)もっと大切なことは、なぜセバスチャンが苦しんでいるのかを理解することなんだ」、とホーナーは続けた。
「我々はセバスチャンがコーナーに進入するときの感覚は非常に優れていることを知っている。そして、現時点では彼はまだそこで自分が望むような感触を得られていないんだ」
一方のオーストラリア人ドライバーであるリカルドは、自らそうした議論に入って行こうとはしなかった。
中国GP決勝後に出されたチームの公式声明の中で、リカルドはベッテルが「自分を前に行かせてくれた」と語っている。
だが、レース直後のリカルドの発言はもう少しあいまいなものだった。
「レースの間には、彼(ベッテル)が(無線で)何を言っていたのかは知らなかったよ」、と話したリカルドは次のように付け加えていた。
「僕は、自分たちの戦略が違っていたことについて、はっきり知らなかったんだ。でも僕は彼を追い抜いた。こういうことでの議論はしたいとは思わないよ」
さらに、ベッテルが自ら彼を前に行かせてくれたと思っているか、と尋ねられたリカルドは、次のように答えていた。
「正直に言って、分からない」
だが、ベッテルのほうは、自らリカルドに道を譲ったと主張している。
「最初に(リカルドを前に出すように)求められたときは理解できなかった。そのとき僕たちは同じタイヤを履いていたからね。だから、僕はもう一度確認したんだ」
そう語ったベッテルは、次のように付け加えた。
「それに、レース終盤に向けて、僕はさらにはっきりと理解させられることになった。もう彼を押さえこんでおくことはできないってね」
レッドブルにとっては、興味深く、かつ気まずい状況となってきている。新しいスターであるリカルドが、これまでのヒーローであったベッテルの立場を脅かしているからだ。
ホーナーも、今季ここまでのリカルドは「ずばぬけている」と評価している。だが、ホーナーは、ベッテルのことを甘く見てはならないと次のように続けた。
「ひとつだけ確かなことは、彼(ベッテル)は今週末のことをすごく悔しく思うだろうということだ。そして、このレースでどこに違いがあったのか、何に苦しめられたのか、どうすればそれを改善できるのかということを真剣に探っていくだろう」
「バルセロナ(第5戦スペインGP/5月11日決勝)で反撃するために、彼はこの3週間の間だれよりも懸命に取り組むだろうね」、とホーナーは結んだ。