昨シーズンに4年連続でF1タイトルに輝いたレッドブルだが、今季はルノーが供給するパワーユニットの問題により、ここまで苦しい戦いが続いている。
だが、そんなレッドブルにとって、今季型車RB10が搭載するルノー製パワーユニットの改善だけが唯一の問題ではなくなってきている。
その問題とは、やはり4年連続でF1チャンピオンとなったセバスチャン・ベッテルをどうやって復活させるか、ということだ。
ベッテルは、V6ターボエンジン導入で迎えたF1の新たな時代にうまく対応できず、今年から新しくチームメートとなったダニエル・リカルドに対し、ここまで予選では1勝3敗、決勝でもリカルドが2位フィニッシュするも失格処分を受けた開幕戦を含めればやはり1勝3敗といずれも負け越している。
さらにベッテルは、先週末の第4戦中国GP決勝でチームからリカルドを前に出すようにチームオーダーを受けた際、「おあいにくさま」と答えるなど、徐々にチーム内の雰囲気にも影響を及ぼすようになってきている。
だが、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、ベッテルはただまだ「感触」がつかみきれていないだけだと主張し、次のように語った。
「我々はセブ(ベッテルの愛称)がクルマに対して、どのようにコーナーに入っていけばよいかということに対して非常に鋭敏な感覚を持っていることを知っているよ」
また、ベッテルを少年時代からよく知っているレッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)も、判断を急ぐことはないと次のように述べた。
「我々はダニエルとセバスチャンによる戦いについて、現時点では判断することはできない。まだ早すぎるよ」
マルコは、『Der Spiegel(シュピーゲル)』に対し、次のように付け加えた。
「我々はベッテルのためのセットアップを見つけ出さなくてはならない。そうすれば彼は再びタイヤ扱いの名人として復活するよ」
ベッテルが現時点において苦しんでいることは、同時に、リカルドの評価を高めるということにつながっている。リカルドが姉妹チームのトロロッソからレッドブルへ昇格したときにはまだ完全にその力が認められていたとは言えなかった。
元F1ドライバーのジャン・アレジは、「私に言わせれば、彼(リカルド)は今シーズンにおけるサプライズだね」と語った。
1997年のF1チャンピオンであるジャック・ビルヌーブも同意見だ。
「リカルドは予選ではいつも速かったが、レースではそれほどでもなかった。だが、今では強いレーサーになったよ」
また、メルセデスの前モータースポーツ責任者であるノルベルト・ハウグも次のように語っている。
「ベッテルよりもいい成績を上げるということは、どのドライバーにとっても非常に難しい仕事だ」
マルコは、ベッテルが苦しんでいるという状況はあるものの、レッドブルはシーズン前に抱えていた悲惨とも言える状況から全体的に上向いてきているのは事実だと認めている。
マルコは、中国GP決勝で3位となったフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)に対し、リカルドがわずか数秒差の4位となったことに言及しながら次のように語った。
「今日は表彰台さえも射程距離に収めることができていた」
しかし、マルコは次のように付け加えた。
「だが、フェラーリも明らかに力をつけてきていることも分かった」
マルコは、フェラーリが中国で躍進ぶりをみせた秘密のひとつが、新たな配合によるシェル製燃料だろうと考えている。
レッドブルが現在使用しているトタル製の燃料は、今季のF1カーに装着が義務付けられている燃料流量センサーが起こす不具合の原因となっているのではないかと報じられている。
マルコは、「我々も、もっと効率的な燃料を近いうちに手に入れたいと願っている」と語った。
だが、ハウグは、「もちろん、メルセデスだってほかのチームが追いついてくるのをただじっと見ているわけじゃないよ」と付け加えている。