メルセデスAMGでチーム内のバトルが熱気を帯びている。
4年にわたってF1世界タイトルを欲しいままにしているセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は5日(土)、メルセデスAMGのマシンを「別世界」と表現。これはまさに、メルセデスAMGのパドック内から漂うムードそのものだ。
別世界からやってきたマシンW05に乗るニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンは2014年F1シーズン、二人で表彰台の頂上を独占。第3戦バーレーンGP予選はロズベルグがポールポジション、決勝はハミルトンが逆転勝利を飾った。
第2戦マレーシアGPではハミルトンに押され気味だったロズベルグ。1周の速さで上回るハミルトンが2008年以来の世界タイトルを奪取すると予想する者は多い。
ところが3度のF1世界王者ジャッキー・スチュワート卿は、ロズベルグをチャンピオン候補として排除するのは早いと次のように話している。
「ニコが、かつての私やアラン・プロスト、あるいはジム・クラークのようにマシンを操れることは証明済みだ」と、イギリス『Mirror(ミラー)』紙に語るスチュワート。
「今季19戦のうち、まだ3戦が終わったばかりだ。ニコは大きな脅威だよ」とスチュワートは言う。
メルセデスAMGの会長ニキ・ラウダも、バーレーンGPの展開から、2014年シーズンはハミルトンのものとまだ判断できないとしている。
「チームのドライバーはいずれも同等の実力の持ち主だと、私はずっと言っていたじゃないか」と、ラウダはドイツ『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』誌に語る。彼もまたスチュワートと同様、F1世界選手権を3回制した偉大なチャンピオンだ。
「このところ、ルイスの方が腕は上といった見方をされているから、これで評価がひっくり返ったら私は嬉しいね」
メルセデスAMGに見られるバーレーンの「逆転現象」は、レッドブルでも顕著だ。フリー走行で非常に珍しくコースアウト、マシンを止めてしまったセバスチャン・ベッテルは、予選でも新チームメートのダニエル・リカルドの後じんを拝した。これで今季2回めだ。
「リカルドのラップは素晴らしかったね」とオーストリアのプレスに語るのは、レッドブルのアドバイザー、ヘルムート・マルコ博士だ。「あれほどコース上でメルセデスに接近するとは思わなかったよ」
マレーシアGP決勝のピット作業でチームが犯したミスからバーレーンGPで10グリッド降格処分を受けたリカルドだが、そんなハンデを負った決勝でもベッテルに先着、4位入賞を飾っている。これがきっかけでレッドブルのヒエラルキーに変化が起きるだろうか。
レッドブルについてきかれたロズベルグは、「彼らに点数を付けるような真似はカンベンしてくれ」と答えている。
「言うまでもなくセバスチャン(ベッテル)は素晴らしいドライバーだ。今のF1でベストと言ってもいい。一方、ダニエル(リカルド)もみごとに仕事をやってのけている。間違いなくレッドブルのシートにふさわしいよ。二人のバトルには興味がそそられる」
それはそれで面白そうだが、レッドブル対メルセデスの戦いともなるとマルコは慎重だ。
「我々は直線で時速15kmぐらい負けている」と嘆くマルコ。「それで一体どうやって彼らを抜けば良いのか、私には分からない」
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