V6ターボエンジンが導入された2014年シーズン序盤のF1は、「フォーミュラ・エンジン」とでも呼ぶべきかもしれない、とメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダが話している。
通常の吸気エンジンから、エネルギー回生ブーストをもったV6ターボエンジンへの変更に際して、F1にエンジンを供給するライバルのフェラーリとルノーよりも優れたエンジンを作ったと言われているのがメルセデスだ。
「タイヤに載せたミシン」と酷評されるほどにエンジン音が昨年までと比べて穏やかになり、F1開幕戦オーストラリアGPでは耳栓をせずにクルマを見守る人の姿も見られた。
しかし、メルセデスのトト・ヴォルフは、迫力にかけるエンジン音について、申し訳ないとは思っていない。
「これが現代の技術だ。これが、市販車の行く末だ。小型化を目指すというなら、F1の変化をただ受け入れる以外にはないと思う」
2014年のF1で変わったのは、そのエンジン音だけではない。ラウダは、脚光を浴びるのはドライバーだろうが、事実上、今のF1は「フォーミュラ・エンジン」だと述べた。
ラウダはドイツの『Kleine Zeitung(クライネ・ツァイトゥング)』にこう話した。「最初の5戦は“フォーミュラ・ワン”にならないだろうね。代わりに“フォーミュラ・エンジン”を見ることになる。第6戦、第7戦にならなければ、(以前のような)ドライバーの走りは見られないだろう」
この発言は、今のドライバーは、燃料の使用レベルとバッテリーの充電率を見守るエンジニアの言葉にしたがって操作をしているだけであることを意味している。
「(バッテリーは)充電しすぎても、充電しなさすぎてもいけないんだ。遅すぎても速すぎてもいけない」
グランプリ1日目のフリー走行セッションでは、クルマのセットアップよりも日曜の決勝をぴったり100kgの燃料で走り終えるための計算が最も大事な仕事なのだとラウダは嘆いていた。
「今や、エンジニアがいなければドライビングが成り立たない」
現在のF1で最もキャリアの長いドライバーとなったマクラーレンのジェンソン・バトンは、V10エンジン時代からV8エンジン、そして2014年からのV6ターボエンジンというF1の変遷を体験してきた。
最近は、ドライバーというよりもエンジニアだよ」とバトンは言う。
「でも、これが現実なんだ」と、バトンは『Times(タイムズ)』に心中を明かしている。
「この流れは僕の好みじゃないし、レースの興奮が失われるんじゃないかって心配しているけど、V10時代には戻れないんだ」