死にもの狂いでF1での順位アップを目指すケータハムは、2014年シーズンに向けてもっと資金を持ち込める「ペイドライバー」を選択することもできたはずだが、最終的に彼らがドライバーに迎えることにしたのは経験豊富な小林可夢偉だった。
可夢偉は、2012年シーズンの終わりにファンからシート獲得のための募金活動を行ったことが話題となっていた。だが、人気があり、気骨のあるドライバーとして知られる可夢偉は、ケータハム加入に当たって自らがチームに持ち込めるのは、わずかに200万ドル(約2億円)にも満たない金額であることを認めた。
可夢偉は、イギリスの『Sky(スカイ)』に次のように語った。
「残念ながら、それはシートを獲得するには十分ではありません。ですが、これがトニー・フェルナンデス(ケータハム/チームオーナー)に対するよい指針かつメッセージになることを期待しています」
さらに、可夢偉のライバルと見られていたヘイキ・コバライネンが、2014年にも報酬の支払いを要求していたのに対し、可夢偉は、今年は無報酬でレースをすると明かした。
2013年はフェラーリの一員としてWEC(世界耐久選手権)に出走していた可夢偉。フェラーリのチーム代表であるステファノ・ドメニカリは、今年も可夢偉に新たな契約締結をオファーしており、そちらを選択すれば実際に報酬を受け取ることも可能な状況であったにもかかわらず、可夢偉が選んだのはケータハムだった。
可夢偉は次のように続けた。
「ステファノは僕がその契約を結ばなかったので残念に思っているでしょうね。ですが、それ(無報酬でのレース)は僕が判断したことであり、僕が申し出た内容でした。トニーに対するこの意思表示が、彼に向けた僕のメッセージでした」
実際のところ、フェルナンデスは、可夢偉のファンによる貢献には感謝するものの、200万ドル足らずの資金持ち込みはF1に必要な巨額の予算という観点からは「あまり意味のない」ものだと語った。
これまでそうした巨額の予算投資を行ったものの、これまでのところ常に最後尾争いが続いているという現状に、航空会社エア・アジアのCEOであるフェルナンデスの忍耐もその限界に達しようとしている。
こうした状況に不満を募らせているフェルナンデスは、2014年がケータハムでのF1挑戦の最後の年になるかもしれないと、リーフィールドのケータハム本部において、メディアに対して次のように語った。
「もし我々が再び最下位となるようなことがあれば、それ以上続けようとは思わないだろう」
「まだ何も決定されているわけではない。だが、5年間もまったくポイントが獲得できていないし、忍耐や予算、そしてやる気の部分においても限界というものがある。だから、今年は重要な年になる」
だからこそ、フェルナンデスとしては、持ち込み資金が豊富なドライバーよりも、可夢偉の実力を買ったということだ。
ケータハムの最後の挑戦となるかもしれない今季に向けたもうひとつの動きが、ケルンにあるトヨタの最新式の風洞を用いるプログラムに変更することだ。その風洞はフェラーリでも使用していたことが知られている。