マーク・ウェバー(レッドブル)は、モチベーションの低下がF1引退の決断を後押ししたと認めた。
10シーズン以上にわたってF1に参戦し、優勝9回、表彰台40回を誇る大ベテランのウェバーにとって、F1アメリカGP(17日決勝)とブラジル(24日決勝)の2戦が引退前最後のレースになる。
37歳のウェバーは、2014年からポルシェの一員として、WEC(世界耐久選手権)のプロトタイプLMP1クラスに参戦することが決まっている。しかし、ウェバーは、昨年からすでに引退を考え始めるようになっていたと打ち明けた。
「ポルシェは、2013年シーズンからの加入を求めてきたけど、僕はまだ準備が整っていないって答えて断った」とウェバーは当時のやりとりを明かした。
「でも、僕はあの年(2012年)、環境の変化について考え始めていたんだ。レッドブルにはすでに長年在籍していたから、何かほかのことをやろうと考え始めるようになっていた。それが人間ってもんさ」
一方で、フェラーリ移籍に向けて、働きかけていたことも認めたウェバー。だが、最終的には去年のクリスマスにF1からの引退を決断した。
しかし、引退を決意させたもう一つ要因があった。それは、体力面だったとウェバーは語った。
「たくさんの人たちが僕と一緒にトレーニングを行ってきたけど、ほとんどは2年もたたないうちにいなくなってしまう。コンディションを整えるために、モチベーションが必要だって考えたことなんて、1度もなかった」とウェバーは『Speedweek(スピードウィーク)』に述べた。
「でも、この1年で、自分を駆り立てるものがどこかへ行ってしまった。だから自問しなければならなかったのさ。そして悟ったよ。“マーク、君はもう19歳じゃないんだぞ!”ってね」
また、以前よりF1以外のことに関心を抱くようになったとウェバーは認めている。
「僕の場合、その理由はとても個人的なことなんだけど、家族やパートナー、そして友人たちともっと一緒に過ごしたいと思うようになった。以前だったら考えもしなかったようなことが、突然レーダーによって探知された感じだったね」
「よくほかのスポーツ選手たちがモチベーション低下の問題について話すのを耳にしてきたけど、いつも"何だそれ?"ぐらいにしか考えていなかった」
「でも、実際には、僕の中からモチベーションが姿を消してしまったんだ!」
「それに、36歳になると、25歳のときとは違う考え方をする。これはドライバーに限ったことではない。スポーツ選手は、非常にたくさんのことをキャリアにつぎ込むからね」
「犠牲を払っているとは言わないけど、もしそう考え始めるようになったら、潮時かもね。やるからには、すべて価値があると信じなくちゃいけないんだ」
「オーストラリアで夏を満喫していると思ったら、突然シーズン開幕前テストをしに冬のヘレスへ行かなければならない。そして思うのさ。“なんだかな…”ってね」
「でも、その一方で、レースを完全にやめてしまったら、自分は幸せではなくなるとわかっていた。ある一定のバランスを見つけなくちゃいけない。刺激を与えてくれる何かをね。そして僕はそれをポルシェに見いだしたのさ」
「これから、困難な仕事がたくさん待ち受けているのはわかっている。でも、F1ほどではないだろう。来シーズン、F1はまた20戦ある。トップチームにいると、本当にくたくただからね」
「僕は、自分の人生にこれまでとは違うバランスを求めている。今がまさにその時なんだ。引退の時期を見極めるのは、スポーツ選手にとって簡単なことではない。ロジャー・フェデラー(テニス選手)やバレンティーノ・ロッシ(MotoGP)を見てごらんよ」
「いま、とてもうまく行っている感じがするんだ。お互いの事情によって、それを証明できる結果はまだ手にしていないけどね」とウェバーはマティアス・ブルナー記者に述べた。