先週末、ハンガリーで行われたフォーミュラ・ルノー3.5シリーズで優勝を果たしたアントニオ・フェリックス・ダ・コスタは、人一倍満足げな様子だった。
レッドブルの育成ドライバーであるダ・コスタは、来季レッドブル入りが決まったダニエル・リカルド(トロロッソ)の後任ドライバー最有力候補に挙げられている。しかし、4月の2013年シーズン開幕戦で優勝を果たして以来スランプに陥り、優勝から遠ざかっていた。
そんな中、厳しいことで知られるレッドブルのドライバー育成責任者ヘルムート・マルコがダ・コスタに対し、再び常勝街道に戻ることができなければ、ほかの育成ドライバーにトロロッソのシートを持って行かれるのも時間の問題だろうとハッパを掛けたことは想像に難くない。
実際に、2013年のダ・コスタの不調は、この類のプレッシャーから来るものであると考える者もいる。
ハンガリーで久々に優勝し、スランプ脱出の突破口を開いたダ・コスタは、「プレッシャーがあるのは、良いこと」とイタリア誌『Italiaracing(イタリアレーシング)』に話した。
「プレッシャーがあるのは、僕に投資してくれる人がいるからなんだ。僕を尊重し、良い結果を期待してくれる人がね。だから、プレッシャーがない方が、もっと最悪さ」
「もし、F1に対する思いが僕の中の何かを変えたのなら、それは、極限状態におけるレースの仕方にあったんだと思う。アロンソ(フェルナンド・アロンソ/フェラーリ)のことを思い浮かべたんだ。称賛を浴びている彼の一貫性ある走りをね」とダ・コスタは説明した。
ハンガリーで再び表彰台の真ん中に立ち、卓越したマクラーレンの若手ドライバーふたり、ケビン・マグヌッセンとストッフェル・ファンドールネを射程圏内にとらえたダ・コスタはいま、2014年のトロロッソのシートが一段と近づいたと感じているに違いない。
ところが、本人からは意外な答えが返ってきた。
「正直言って、何の確信も持てないんだ」とダ・コスタ。
「マルコとトスト(フランツ・トスト/トロロッソのチーム代表)が、僕をトロロッソに乗せたがっているのは知っている。でも、そのためには、自分にそれ相応の価値がないと駄目なことも理解している。それに、今シーズンの僕は、それを十分に果たせていないこともわかっているよ」
「これまで、たった1勝しか挙げていなかった。19戦ある選手権において、とてもじゃないけど多いとは言えないよね」
「ブダペストで一歩前進したけど、まだ十分ではないと思う」とダ・コスタ冷静に現状を分析する。
「僕は自分がラッキーだと自覚している。サインツ(カルロス・サインツJr.)やクビアト(ダニール・クビアト)より一歩リードしているんだから。もし僕たちが対等だったら、おそらく3人の中から誰か1人が選ばれるんだろうね」
「だから、このチャンスを手にできるかどうかは、僕次第なんだ。できる限りベストを尽くすつもりさ」とダ・コスタは誓った。