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マクラーレン・ホンダに乗る日本人の可能性

2013年06月15日(土)9:31 am

「日本人に乗ってほしい」

ホンダは日本人F1ドライバーを希望していることをはっきりと口にした。
しかし、「F1で勝てるドライバー」という条件付きだ。

F1ブームを巻き起こした第2期ホンダF1活動。
1987年、黄色いキャメルカラーのロータス・ホンダには、新進気鋭のアイルトン・セナ、そして日本の期待を背負ってデビューした中嶋悟がそこにいた。1988年にはマクラーレン、ホンダ、アラン・プロスト、アイルトン・セナ、という組み合わせで16戦15勝という伝説のチームが出来上がった。しかし、そこに日本人ドライバーの名前が候補になる事はなかった。なぜなら、マクラーレンもホンダもいつだって「レースに勝つ」ことが最優先・最重要課題だからだ。

しかし、あの伝説的な黄金時代から25年の時が過ぎた今の時代は、どのスポーツ選手でも世界で優勝争いをする技術・精神レベルに成熟してきている。早くから世界へ出て、世界でもまれ、世界を肌で感じ、世界で勝ち抜く精神と必要な技術を身に付けてきたからだ。

ではモータースポーツ界で、「F1で勝てるドライバー」に最も近い日本人ドライバーはいったい誰だろうか? ほかのスポーツ選手が世界で活躍し成長したことから、ここではあえて可能性の高い『海外組』だけを挙げてみよう。

海外組の中から、今季のレース結果を基に、順に紹介していこう。

1人目は、F1に乗るも、勝てる力を見せきれず、F1でやり残したことがあるまま悔しい想(おも)いを胸にアメリカの最高峰インディカーへ戦いの場を移し、ヨーロッパ式からアメリカ式に変わったことで苦戦しながらも、精神面は腐るどころか強く成長し、今季、念願の優勝を飾った佐藤琢磨のF1復帰の可能性はどうだろう? 実力も人気も兼ね備えている36歳だ。

遅いレースデビューだった琢磨は、経験不足というハンディを抱えながらも、たぐいまれな身体能力、頭の良さ、負けん気の強さ、運を兼ね備え、トントン拍子にF1への階段を上っていった。

F1で結果もそれなりに残してきたが、世界一流の選手が真剣勝負するF1では結果がすべて。勝てないという印象を一度でも与えてしまうと、勝ち組にはなれない。琢磨はレースの経験不足が露呈してしまい、チャンスの時につまらないミスが目立ってしまったことで、F1では勝ち組になることはできなかった。

しかし、F1とインディカーという世界最高峰のレースで10年近い経験を積み、アメリカ最高峰のレースで優勝した今は、成熟したと言えるだろう。琢磨は、「今はインディカーのタイトル獲得に集中している」と公式にコメントしているが、将来のF1復帰については否定も肯定もしていない。経験豊富なホンダのトップドライバーということでも、F1テストの可能性がないとは言えない。

2人目は、現在、F1に近いクラスであるAuto GPに参戦中で、堂々ランキング1位の佐藤公哉が挙がる。Auto GPというレースに参戦するドライバーたちのレベルがどれほどのものかは未知数だが、今季はすでに何勝かしているため、「勝ち方を知っているドライバー」という結果が残っている。

勝ちにこだわるマクラーレン・ホンダでは、勝ち方を知っているという意味では候補に挙がるかもしれない。しかし、F1にテストで乗った時、印象的な走りができるかどうかが大きな判断基準になるのは間違いない。早ければ今季にもF1テストに参加する可能性も十分にある。そのたった一回のテストが、F1勝ち組になれるかどうかの大きな岐路になると言っても過言ではない。

もう1人挙げよう。3人目は、2度のジュニアカート世界王者に輝き、今季フォーミュラデビューをしたばかりの弱冠17歳、笹原右京。母親が元F1ドライバー片山右京氏のファンだったことから名付けられた。ヘルメットも片山右京氏と同じデザインだ。父親もダートレースをしていたことから、レーサーへの道は運命だったとも言える。

今季は初めてのフォーミュラカー、初めてのチームということで、いまだクルマを自分の手足のように操るためのセッティングを手探りしている最中で、本当の実力を発揮できずに悔しい想(おも)いをしている。普段はどこにでもいる田舎の高校生という印象だが、ヘルメットをかぶったら、相手が誰であろうと絶対に誰にも負けないという強い気迫を感じる。

また、自分に合ったセッティングが見つかれば、初めてのコースでもいきなり昨年の優勝者よりも速いタイムで走ることは証明済みで、世界中のチャンピオンチームも驚くほどの速さと可能性を持っており、実際にオファーも複数もらっていたほどだ。ただ、笹原は資金不足という大きな問題を常に抱えており、テスト不足を嘆くどころか、今季や今後のレース活動継続に対しても赤信号が点滅している非常に厳しい状態だ。

しかし本人は、出るレースは全部勝ってチャンピオンになり、F1に乗って勝つ事しか考えておらず、生活のすべてをレース中心に組み立てている。肉体トレーニング、メンタルトレーニング、イメージトレーニングも毎日続けているそうだ。それは父親の教えが大きいという。強い精神力を持った17歳だ。

さて、3人の日本人ドライバー海外組を紹介したところで、話を「F1で勝てるドライバー」に戻そう。名門マクラーレンに加入し、世界中からの大きなプレッシャーの中、安定して勝てるくらいダントツに速い実力ある日本人ドライバーは今いるのか? 現時点で皆が声をそろえて名指しできる絶対的な日本人ドライバーはまだいない、というのが正直なところだろう。ネット上での意見も分かれている。

勝負の世界にたらればはないが、ついこんな想像をしてしまう。もし佐藤琢磨が今季インディカーでチャンピオンになったら、F1でやり残したことを達成したくならないか? もし佐藤公哉がAUTO GPでチャンピオンに輝き、F1テストで印象的な走りをしたら? もし追い込まれた笹原右京が1度でも圧倒的な速さで優勝し本当の実力を世界に見せつけたら?

マクラーレン・ホンダの始動は2015年だ。2016年を目標と見据えたら、まだ3シーズンある。3年もあれば人は大きく逞(たくま)しく成長する。

マクラーレンも、ホンダも、そして日本のファンも、全員が名指しできるような「勝てる日本人F1ドライバー」がしっかり育ち、マクラーレン・ホンダのドライバー候補となるその日を楽しみに待とう。

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