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井原慶子x笹原右京「世界へ挑戦する」崖っぷちの“面談”が実現

2013年05月04日(土)17:38 pm

4月都内某所、世界のレースシーンで活躍する井原慶子と笹原右京の“面談”が実現した。
F1ドライバーを目指す弱冠16歳(取材当時)の笹原右京の希望で「尊敬する井原慶子さんにぜひお会いしたい」という事から実現した。

世界のモータースポーツシーンで活躍する井原と笹原が、帰国している最中に都内に同じタイミングで居合わせるのはごくわずか。

実際、両名とも東京都内滞在中は文字通り、朝から晩までスポンサー活動およびメディア活動でスケジュールがいっぱいのため、今回の面談も当日午前中に最終調整して何とか"崖っぷちで実現"した。それでも移動時間や会議が伸びるなど、結局両者が顔を合わせていた時間は30分程度で、終わりの時間になると、それぞれ次の場所へタクシーで足早に向かっていったほどだった。

井原は、10年を超える海外レース経験を持ち、2012年からは映画でも有名な名門ガルフレーシングからFIA世界耐久選手権(WEC)に日本人として唯一のフル参戦を果たし、今年も同チームからWECに参戦することが発表されたばかり。WECは、ル・マン24時間を含む耐久レースの世界最高峰シリーズで、元F1ドライバーの佐藤琢磨や中嶋一貴、中野信治、今年から小林可夢偉もフェラーリドライバーとして参戦している注目のレース。ほかにも世界各国から元F1ドライバーやF1を虎視眈々(たんたん)と狙うドライバーたちが集まっている。

また、井原はこれまでのレース活動実績が評価され、FIAのモータースポーツ意思決定機関になっている世界モータースポーツ評議会が設立したドライバー評議会(Drivers' Commission)の初代メンバーとして選ばれ、さらに女性のためのFIAウーマン・イン・モータースポーツ評議会(FIA WMC)のメンバーにも選出されている。これは日本人ドライバーとして快挙となる。

FIAメンバーとしての井原の主な活動としては、ドライバーの立場から安全や環境に配慮した電気自動車(EV)などの技術開発、さまざまな権利などについて世界と議論し、モータースポーツの一層の発展を目指す。

FIAドライバー評議会の初代メンバーを紹介すると、元F1世界チャンピオンのエマーソン・フィッティパルディ会長、現世界ラリー選手権(WRC)チャンピオンのセバスチャン・ローブ副会長、元F1チャンピオンのナイジェル・マンセルなどが名を連ねる。もちろん、FIAのトップは、ミハエル・シューマッハと共にフェラーリ黄金期を率いたジャン・トッドだ。

そんな井原との面談を懇願したF1ドライバーを目指す笹原右京は、フォーミュラ・レース1年生の17歳。カート時代、ロタックス世界ジュニアカート選手権で日本人初で2度の世界チャンピオンという快挙を達成し、今年からF1への最短距離として選んだイタリア・フォーミュラ・ルノー2.0アルプスシリーズに参戦し始めたばかり。普段は、カートレースでの実績が認められて進学したオーストリアの有名高校で学ぶ、高校2年生だ。

実は両者の年齢差は、親子ほど離れている。まず名刺交換したアラフォーの井原がティーンエージャーの笹原に「16歳?! ちなみにお母さんはおいくつ?」と真っ先に聞き、笹原の母親の年齢のほうが近いことがわかると「今日は“面談”か参観日だね、まいったな~(笑)」と苦笑しながらも和やかな雰囲気で“面談”が始まった。

若干17歳のなぜ笹原が、なぜ親子ほど離れた女性ドライバーの井原に会いたいと言い出したのか? 井原は笹原が目指すF1に乗ったわけでもなく、F1世界チャンピオンでもない。笹原に理由を訪ねると、井原の著書『崖っぷちの覚悟―年齢制限!?関係なし!』を手にし、感動したからだという。

笹原「僕もカート時代からいつも崖っぷちで、何度もレースを断念しなければならないくらいの状況に陥りました。今もそうです。オフシーズンテストでの結果が認められ、今年ユーロノバというチームからオファーを頂けたのですが、スポンサー不足も影響し、念願の海外フォーミュラ・デビューが正式に決まったのは開幕ギリギリでした。ライバルは昨年からたっぷりテストをして練習していた中、僕は開幕直前まで練習することができず、さらに年齢が16歳で若すぎるということからライセンスやいろんな問題も起こったり、参戦するまでにもすでにさまざまな壁を経験しました」

世界でトップになる実力は実績として残した、でも世界でレースを続ける資金が足りない。そんな笹原を地元群馬県では『ぐんま100馬力』という団体を設立し、皆がお金を出し合って応援している。そこには政治家、地元の経済界、銀行などあらゆる人が笹原を世界へ出そうと応援している。

「今回の一時帰国も、オーストリアで通っている高校に事情を説明し、許可を得て学校を休んで帰国し、レース活動に必要なスポンサー活動をしています。年末の冬休みの時に帰国した際、海外レース活動の先輩である井原さんの著書を読んで、『絶対にあきらめない』というスタンスなどすごく共感できる部分がたくさんあり、感動しました。今日はお忙しい中時間を作って頂き本当にありがとうございます。すごくうれしいです」

井原「次の世代の子どもたちに伝えたいと思って書いたので、書くのは大変だったけど、本当に書いて良かったです。こちらこそ今日はありがとうございます」

「カートでも世界を経験してると思いますが、レースの世界では、『絶対に負けない!』という強い気持ちがすごく大切で重要です」

「イギリスでのレース活動時代、今のF1ドライバーたちと同じレースを戦ってきましたが、彼らもすごい負けず嫌い。あらゆることをしてでも絶対に勝ちたいという人が世界中から集まってきているのが海外のレースですね。もちろん、私も絶対あきらめないし、負けません」

「ジュニアカート時代で世界チャンピオンを獲得するなど実績もある笹原選手には、ぜひF1チャンピオンを目指して欲しいです」

笹原「はい、いつも崖っぷちですが、僕も絶対にあきらめずに頑張ります!」

井原「崖っぷち同士、頑張りましょう!」

短い面談時間、レーサー同士ともあって意気投合、ほとんどがオフレコの内容だったが、決して恵まれた環境でなくとも、崖っぷちであろうとも、「世界へ挑戦し、夢を実現する」事を絶対にあきらめない二人には、『崖っぷち』『決してあきらめない』『負けず嫌い』という言葉以外にも、共通点がいくつかあった。それは、『自分の道を信じて』、『最大限努力』し、しかし『謙虚』で、最後には人がサポートしたくなる『人間的魅力』を持ち合わせていることだ。そして純粋に『レースが好き』だという真っすぐな気持ち。

日本人というアイデンティティーを持ち合わせた二人は、今も自分の道を信じて世界へ挑戦している。

【Live中継映像】WECスパ6時間耐久レース 5月4日(土)21:30から5日(日)3:30まで
【日程・結果】2013年WEC(世界耐久選手権)
【日程・結果】フォーミュラ・ルノー2.0アルプス
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