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F1マレーシアGPでのベッテルの行為に批判の嵐

2013年03月26日(火)9:41 am

F1第2戦マレーシアGPで、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)がチームの指示を無視してチームメートのマーク・ウェバーを抜いて優勝したことが物議を醸している。

ベッテルに抜かれて2位になったウェバーは、チームは「いつものように」ベッテルを「かばうだろう」と表彰台インタビューで語った。

しかし、今回は違うかもしれない。少なくとも表向きは、レッドブルはチームの指示を無視したベッテルの行為を批判している。

表彰式後の記者会見で、ベッテルは反省を見せ謝罪したが、チームの指示を無視したことは「ミス」であり、「故意ではない」と主張した。

「指示を無視する意図はなかった」とベッテルは語っている。

チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、その言葉をうのみにしてはいない。

「彼は、マークに対して仕掛けたことで、自分の意志をはっきり示した」とホーナーは話している。

ベッテルのコメントを聞くと、無線の指示を聞き逃したのかもしれないという印象を受けるが、ホーナーはそれは違うと否定している。

「彼は、やりとりの内容を理解していた」とホーナーは明かし、次のように続けた。「無視することを選んだんだ」

「明らかに、自分が聞きたいことだけ聞くことを選んだんだ」

ホーナーは、ウェバーとの位置関係を元に戻すようベッテルに指示しなかったのかと聞かれて、そうしたとしても意味がないと語った。

「スローダウンして順位を戻せと指示したところで、彼がそうすると本気で思っているのかい?」

レッドブルのチーム内ではベッテルが“ナンバー1”として優遇されていると見る者は多い。しかし、レッドブルは公的には、2人のドライバーを平等に扱うと主張している。

メディアの反応は、ほぼ一致している。「エゴではナンバー1だ」と『Der Spiegel(デア・シュピーゲル)』のラルフ・バッハ記者は書いている。

レッドブルの後続のメルセデスAMGでも、4位のニコ・ロズベルグが3位のルイス・ハミルトンを抜かせてくれとチームに求めたが、認められなかった。「ロズベルグが従ったのに対し、反抗的なベッテルは情け容赦なく追い抜いた。おそらく、恐れるものが何もないからだ」とバッハ記者は書いている。

『Bild(ビルト)』紙のフランク・シュナイダーも同意見だ。「ベッテルは、自分自身の冷酷さに驚いたかのようだった」

「ますます、憧れの人であるミハエル・シューマッハを思わせるようになってきた。シューマッハは、愛されていたが、嫌われてもいた。ベッテルは、そうなる道をたどっている」

元F1ドライバーのアレックス・ブルツも同じ考えだ。

「結局、非公式だったナンバー1の地位をはっきりさせた。だから、これで何かが変わるわけではない」とブルツは語っている。

ベッテルは何らかの方法で罰せられるのかと聞かれたホーナーは、今後もさらに「秘密裏に」話し合いをするだけだと答えている。

「どうやら、重要なチームのボスがチームの花形選手にできることは、手首を優しく、はたくことくらいのようだ」と『Mirror(ミラー)』のバイロン・ヤングは書いている。

元F1ドライバーのパトリック・タンベイは、『RMC Sport(RMCスポール)』にこう話した。「セバスチャン・ベッテルの真の姿が明らかになったと思う」

「クルマの外では、にこやかで非常に親しみやすいという評判だ。しかし、ヘルメットをかぶったら、戦士に、鬼になる」

「どんなことをしても勝ちたいんだ。メルセデスAMGのハミルトンとロズベルグもだいたい同じような状況だった。しかしロズベルグは、非常にお行儀がいいので、ボスの指示に従った」

メルセデスAMGの非常勤役員を務める元F1チャンピオンのニキ・ラウダもこう語る。「ベッテルは、チームの論理に逆らって、なりふり構わず優勝した。重大な間違いだ」

かつてフェラーリでエンジニアを務めていたホアン・ビラデルプラットは、『El Pais(パイス)』紙に対して、「1つの鶏小屋でおんどりを2羽飼うのは大変なことなんだよ」と話し、レベルの高いドライバーを2人抱えると、問題が発生する確率が高くなりチームが気苦労することを語っていた。

ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によると、ザウバーのチームマネジャーであるベアト・ツェンダーも同じ意見だ。「彼(ベッテル)は自分の首を絞めた。パドック全般の反応も良くないよ」

パドックの外からだが、ベッテルの行為を支持する声もある。伝説的ドイツ人テニスプレーヤーのボリス・ベッカーが、ベッテルは「3度ワールドチャンピオンをとった者がすべきことをした。自分の手で解決したんだ!」と語っている。

『Speedweek(スピードウィーク)』記者のマティアス・ブルナーはこうコメントしている。「勝者としては正しいことをしたが、スポーツマンとしては正しいことではなかった」

しかし、マレーシアGPをめぐってより深刻な問題になりそうなのが、ウェバーの将来だ。ベッテルに抜かれたあとで中指を立てて怒りをあらわにしていたウェバーだが、レース後にメディアに対して、レッドブル、ひいてはF1をやめることも考えているとほのめかしている。

しかし、ホーナーはこの発言を深刻に受け止めてはいない。

「さっき、レース後のミーティングで、2人とも落ち着いて顔を合わせたところだ。マシンについて建設的に話し合い、どこを改善すべきか、次のレースで何を良くすべきかに集中していたよ」

「チームが状況を操作したというようなことは一切ない。陰謀などないよ。それなのに、どうして将来について考え直す必要があるんだね。ああいったものは、ただ純粋な感情のあらわれだよ」とホーナーは語っている。

元F1ドライバーで、イギリスのテレビ局『Sky Sports(スカイ・スポーツ)』で解説を務めるマーティン・ブランドルは、ベッテルとウェバーはこれまでも「交際にいたらない間柄」だったが、これで2人の関係は本当に終わった、と中継中に話していた。

「おそらく2人が一緒にディナーに出掛けることはないだろう」とレッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコも認めている。

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