最後のF1シーズン前テストが終わったとき、一番多く関係者が口に出したチームは、メルセデスAMGとレッドブルだった。
メルセデスAMGは、テスト最後の2日間で続けてトップタイムを記録した。「誰もが今度のメルセデスAMGは速いと言っている。しかも一貫して速いとね」と、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』の記者ミハエル・シュミットはそう書いている。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコもメルセデスAMGを警戒している。「少なくとも1周の速さでは(速い)。真剣に受け止める必要はある」
マクラーレンのスポーティングディレクターであるサム・マイケルも同様だ。「ハミルトンとロズベルグ(ともにメルセデスAMG)は、すべての状況で速かった」
逆に、速さが未知数なのが3年連続でチャンピオンを獲得しているレッドブルだ。最後のテストは、前半の2日間が雨になり、読みにくいものになった。
髪を短く切った現チャンピオンのセバスチャン・ベッテルは、完全に満足しているようには見えなかった。
「クルマの変更点を評価したり、いい方向を見つけたりするのがものすごく難しい。理由は単純に、タイヤがそれに耐えられないからだ」というベッテルの言葉をブラジルの『O Estado de S.Paulo(オ・エスタード・ジ・サンパウロ)』紙が伝えている。
チームメートのマーク・ウェバーも口をそろえる。「もう1、2週間テストが必要だ。そうはいかないけれどね」
また、ベッテルは「新しいパーツは、完全に望んだ通りに機能しているわけじゃない」と明かした。
パドックにいるF1関係者の中には、レッドブルがわざと実力を出していないと見る者もいる。
「(レッドブルは)いつも手の内を見せない」とフェラーリのフェリペ・マッサは話している。
メルセデスAMGのニコ・ロズベルグも同じ考えだ。「ライバルの中には、ごまかしているチームも絶対にいくつかあると思う」
しかし、レッドブルのオーナーでエナジードリンクメーカーの会長ディートリッヒ・マテシッツは懸念を口にしている。「タイヤのせいで誰もが少し心配になっていると思う」
マテシッツの右腕であるマルコはこう話した。「すべてが計画通りに進んではいない。だが、これからはデータを分析する番だ」
F1チームの元技術責任者のゲイリー・アンダーソンは、『Speedweek(スピードウィーク)』にこう述べた。「今も一番のマシンはレッドブルだと思っている。だが、メルセデスAMGは非常に強い印象を残した。また、ロータスも先頭につけていると思う。ただ信頼性の問題は出ているが」
「マクラーレンについては、何とも言えない」とアンダーソンは述べている。
では、昨年2位のフェラーリはどうだろうか。最後のテストを終えて、フェルナンド・アロンソは、今季のマシンF138は昨年と比べると「200倍」良いと言っている。
フェラーリのテストドライバーであるマルク・ジェネは、『Marca(マルカ)』紙にこう話した。「何回か勝てるチームがいくつもある。フェルナンドがクルマに満足しているのは知っているよ」
「撮影日に走ったけれど、グリップが上がっている。考えていた通りの仕上がりになっているけれど、ほかのチームについては分からない」
ロータスのキミ・ライコネンは、食あたりと見られる体調不良で予定されていたテストを1日欠席したが、翌日には復帰した。テストを終えたライコネンは、2013年の勢力図は昨年とそれほど変わらないだろうと話している。
ロズベルグが最終日にテスト全日程通してのトップタイムを出したが、フィンランドのテレビ局『MTV3』に同等のタイムが出せたかと聞かれると、ライコネンはにやりとしてこう答えた。「近いタイムだろうね」
マクラーレンのマイケルも、チームの力は接近していると見ている。「これまで見たラップタイムからして、今シーズンは非常に接戦になるだろう」