幼少の頃からドライバー育成プログラムに参加し、マクラーレンの秘蔵っ子と呼ばれていたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が2012年シーズンをもってマクラーレンを離脱し、2013年シーズンからメルセデスAMGに移籍した。ハミルトンがマクラーレンを離れた理由には報酬や待遇、チームとの不和など、さまざまな憶測が飛び交っているが、マクラーレンの慰留が実らずハミルトンが移籍の道を選んだとする声が多い。しかし、マクラーレン・グループのロン・デニス会長は、また別の理由を示している。
マクラーレンのなかでもハミルトンとの親交が深く、少年だったハミルトンをF1ワールドチャンピオンに育て上げたデニスだったが、2013年以降の契約更新交渉においてハミルトンとの関係に亀裂が入ったと言われている。
一連の移籍劇について、デニスは「ルイスがチームに見切りをつけて離脱した、という見方は間違っている」と『CBI』誌に話している。
「状況が思わしくなければ、最終的に別々の道を進むことになるだろう。人生というものは、誰かひとりの決断だけに左右されるものではないんだよ。そんなはずがない。あくまでの、状況次第なんだ」
事実、ハミルトンのマクラーレン離脱はマクラーレンにとって苦渋の決断だったと見る向きが強い。しかし、冷静な人物だがときに感情的な面を見せるデニスはこう話している。「みんなが私に、苦々しい気持ちがあるかを聞いてくるんだ。いったい何の話をしているんだ? 私は現実主義者なんだよ」
「これからもルイスと一緒にやれるような環境を作れたかどうかって? はっきり言って、イエスだ。しかし、それは正しい決断になりえただろうか? 私はそう思わない」
これ以上ハミルトンと共に戦うのは無理だと判断したマクラーレンが、その後任に選んだのはセルジオ・ペレス(元ザウバー)だ。F1デビュー2年目でF1ワールドチャンピオンになったハミルトンの後任選びが「正しい決断」だったか否かは、今後のペレスの活躍にかかっている。