F1の最高権威バーニー・エクレストンは、F1の今季最終戦ブラジルGPが終了した今も2012年のドライバー選手権の結果を疑問視するフェラーリの姿勢を「完全なジョークだ」と非難した。
このブラジルGPにおいて、レース前に13ポイント差で首位のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)を追いかけていたフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が2位でフィニッシュしたものの、ベッテルが6位入賞したことにより、3ポイントというきん差でベッテルのタイトル獲得が決定していた。
ところが、今週になって、追い抜きが禁止されているイエローフラッグ区間で、ベッテルが追い抜きを行ったと見えるビデオ映像がメディアによってこぞって取り上げられた。もしこれがペナルティーの対象とみなされた場合、アロンソの逆転タイトル獲得の可能性もありうる。
『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』は、「アロンソ陣営がこの問題となった映像を広めたために論争がぼっ発した」と報道。
フェラーリは、F1を統括するFIA(国際自動車連盟)に「確認」を求める書簡を提出したことを認めており、この件について30日(金)まで抗議できると主張している。
イギリス各紙は、この一件を「完全なジョーク」とはねつけたエクレストンのコメントを掲載。
「最高のレースだったし、すばらしいタイトル争いだった。なのに今、みんなが話題にするのはこのことばかり」とエクレストンは嘆く。
「この騒動は“ジョーク”だよ。ベッテルが追い抜きを行ったのは、(追い抜き禁止の解除を意味する)緑の旗を通過した後だった。これは事実だ」と述べ、さらには「もうこれ以上の訴えは必要ない。完全に見当違いなんだから」と加えた。
「何一つ問題は無いのにこの件を掘り下げるのは非常に愚かな行為。フェラーリは素晴らしいシーズンを送ったけれど、この件に関しては間違いを犯した」と非難した。
また、エクレストンはドイツの『Der Spiegel(デア・シュピーゲル)』誌に「ベッテルには何の影響もないだろうし、2012年のF1世界チャンピオンのままだ」と話した。
現にFIAの広報責任者ノーマン・ハウエルは、「フェラーリは説明を求める書簡を送ってきた。これから私たちはそれに返信する」と述べ、さっそく正式な文書で回答するようだ。
さらに、FIAのF1技術部門責任者と安全委任会の代表を兼任するチャーリー・ホワイティングは、「ベッテルの追い抜きがルールに基づいて行われたことに、疑いの余地はない」と語った。
ホワイティングはドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に、問題とされている追い抜きの際、相反する旗とライトが混在していたことを認めている。
しかし、「それはレースの最中に審議され、ペナルティーの対象にはならないと結論付けられた」と説明した。
また、前述のFIAの広報責任者ハウエルは、「ベッテルのタイトルは確定であり、さらなる審議は行われない」と付け加えている。
エクレストンは、フェラーリに民事訴訟という手段が残されていることを認めているが、『Telegraph(テレグラフ)』に対して次のように述べた。
「この一件は騒動になる前から間違っている」
「今後、何も起きはしないよ」
一方で、すでに起きていることもある。フェラーリとアロンソに対する批判だ。ドイツの『Berliner Kurier(ベルリナー・クーリエ)』は「往生際(おうじょうぎわ)の悪い人たち」とこき下ろした。
また、ドイツの日刊紙『Bild Zeitung(ビルト・ツァイトゥング)』に至っては、ベッテルのタイトルを覆そうと躍起になっているさまをフェラーリにかけて「アンフェア(汚い)、アンフェラーリ」と揶揄(やゆ)した。