F1アメリカGP決勝が行われた18日(日)、フェラーリはレース直前にフェリペ・マッサのギアボックス交換を決定し、わざとペナルティーを受けさせたという事で物議を醸している。
ギアボックスは統括団体のFIA(国際自動車連盟)によりステッカーで「封印」されており、メカニックが修理をする際にはその封印を破る事になり、5グリッドの降格ペナルティーが科される。
マッサは、チームメートのフェルナンド・アロンソより上位で予選を通過したが、チームがあえてギアボックスの封印を破った事により、アロンソのスタート位置が8番グリッドから7番グリッドに繰り上がった。
アメリカGPが今季最後から2番目のレースという事もあり、フェラーリは戦略的な決断を下したが、この決断は重要であったといずれ証明できるかもしれない。
ポールポジションを獲得したセバスチャン・ベッテル(レッドブル)がアメリカGPで優勝した場合、年間タイトルをアメリカGPで決めてしまうのを防ぐ為には、アロンソは4位以内でレースを終えなくてはならない。しかし、この作戦を決定した主な理由は1グリッド前にでる事ではなく、“汚い側”のグリッドからのスタートを避けるためだった。
真新しいサーキット・オブ・ジ・アメリカズのアスファルトはただでさえ滑りやすく、さらにグリップを得られない“汚い側のグリッド”からのスタートでは、順位を落とす可能性が高いとドライバーたちは懸念していた。
「汚い側のグリッドからのスタートは罰を受けるようなものだっただろう。1周目が終わった時点で先頭集団からかなり離されている可能性があった。これはふたりのドライバーが合意した上での決定だった」とフェラーリは説明している。
「われわれは、いつもチームの利益を個々のドライバーの利益の前にしてきたが、これは誰もが知っている公のチームポリシーだ」
ルールには全く違反していないものの、フェラーリの行為は物議を醸している。イギリスのテレビ局『Sky(スカイ)』のピットレポーター、ナタリー・ピンカムは「ルール違反ではないけれど、これって公平なのか」と疑問を投げかけている。
「特別思う事はないね、フェラーリのすることだからね」とベッテルはグリッド上で答えた。
その数分後、フェラーリの決定はアロンソを助けることになる。アロンソは繰り上がった7番グリッドから1周目に4番手まで順位を上げる事に成功した。その逆に、“汚い側”からスタートしたマシンはことごとく苦しいスタートを切っていた。
同局のコメンテーターで元ドライバーのマーティン・ブランドルは、「エンジニアたちは正しかった。この1グリッドの差が全てだった」と語った。
結局、ベッテルはレース終盤にルイス・ハミルトン(マクラーレン)に抜かれて2位となり、アロンソが3位に入ったため、最終戦ブラジルGPにタイトル争いは持ち越された。