セバスチャン・ベッテル(レッドブル)が、F1アブダビGP(11月4日決勝)でピットレーンスタートから3位表彰台を獲得したことで、次のレースでベッテルのタイトルが確定する可能性が高まった。
アブダビGPで2位フィニッシュを果たしたランキング2位のフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)は、表面的には楽観的な態度を崩さず、闘志もまったく衰えていない。しかし、レース後にはわずかに落胆も見せていた。
「セバスチャンが最後尾だったのだから、差をもっと大幅に縮めるチャンスだった」とアロンソは話している。
ベッテルは、後方から追い上げていたレースの序盤、セーフティカー先導で走っている際に、前を走るマシンに追突しそうになってコース脇の発泡スチロールの表示板に激突。壊したフロントウイングを交換するためにピットインしたことで最後尾に落ち、再度一からやり直さなければならなかった。
レース中盤までの位置関係では、アロンソはランキングでトップに返り咲けるはずだった。しかし結局、その後の追い上げでベッテルは3位フィニッシュ。2人のポイント差は3ポイントだけ縮まって、残り2戦で10ポイント差となった。
アロンソは、愛読する武士道の本からの引用をフェイスブックに書き込んで、闘志をあらわにしている。
「武士は、目的を達成するまでは躊躇(ちゅうちょ)せず、疲れも、ほんのわずかな失望も見せない」
一方、レース中盤までトップを走っていたルイス・ハミルトン(マクラーレン)は、マシントラブルでリタイアしたあと、ベッテルのレースをこう評価していた。「(残りの)レースを見ることができたけれど、セバスチャンがピットレーンから順位を上げてきたのは信じられないくらいすごかった」
「彼は、F1で一番ラッキーな人間だ」とハミルトンはこう述べて、2回のセーフティカー導入がベッテルの追い上げに有利に働いたことを示唆した。
ハミルトンのチームメートで、レース終盤ベッテルに抜かれて4位になったバトンも同じ意見だ。「ベッテルは、2回目のセーフティカーがあってラッキーだった」
「彼はプライムタイヤ(アブダビGPではミディアムコンパウンド)がすごく良くて、クルマも速かった。でも、あの2回のセーフティカーがなかったら、あそこまで上がってきていなかっただろう」
また、フェラーリのチーム代表ステファノ・ドメニカリの評価を『Tuttosport(トゥットスポルト)』が伝えている。「ベッテルは素晴らしいレースをしたが、2回のセーフティカーがあってラッキーだった」
しかし、レッドブル関係者は手放しでベッテルを褒め称えている。
「彼の戦闘能力に少しでも疑問を持つ者がいたとしても、それは今日で終わった」とレッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは話している。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコはドイツのテレビ局に対し、「驚異的、信じられない。この2、30年を振り返っても、あんなのは思い出せない」とベッテルを絶賛した。
いずれにしても、ベッテルはこれで2012年のタイトルに向けて最初の「マッチポイント」を獲得したことになる。次のアメリカGP(11月18日決勝)でベッテルがアロンソより15ポイント多く獲得すれば、最終戦ブラジルGP(11月25日決勝)を待たずにタイトルが決まる。
万が一、アメリカGPでアロンソがノーポイントに終わった場合、ベッテルは表彰台に上がりさえすれば、タイトル3連覇を成し遂げることになる。
「まずは数日、一息ついてリラックスしたいね。それからまた集中する」とベッテルはF1公式サイトのインタビューで語っている。
「そうだね、もし可能性があるのなら、“ゲーム・セット”といきたいね」