NEXT...F1開催スケジュール

ザウバー新代表「可夢偉を全面的に信頼している」

2012年10月18日(木)10:39 am

ザウバーの新代表に就任したモニシャ・カルテンボーンのインタビュー。

Q:パスポートに書いてあるフルネームは、モニシャ・カルテンボーン・ナラングですね。両方の姓をほとんど使わないのはどうしてですか?(カルテンボーンはインド出身のオーストリア人で、ナラングは旧姓)

カルテンボーン:自分のインド名が本当に好きなのです。インドから受け継いでいるものも、両親の家族も、私にとっては非常に大事です。ナラングの姓を失いたくないのはそのためです。しかし他方で、二重姓は日々の業務においてあまり実用的ではありません。だから、フルネームはごくたまにしか使わないのです。

Q:インドGP(10月28日決勝)は、ご自身にとってどんな意味を持つものですか?

カルテンボーン:公私をしっかり区別する必要がありますね。スポーツの面から言えば、ザウバーF1チームにとってインドGPはほかのどのレースとも同じです。同じように周到な用意をし、同じように最大限の結果を出そうという意気込みで臨みますから。個人的には、また少し違います。当然、自分の母国でのレースを特別楽しみにしています。仕事ですべてのグランプリを飛び回っているので、個人的にインドへ旅する時間はありません。学生時代は、定期的に行っていました。夫のイエンスとの結婚式は、インドでヒンドゥー教のしきたりにのっとって、とても幸せな素晴らしい式を挙げました。インドには大変愛着を感じています。

Q:グランプリ期間中に、友人や家族と会う予定ですか?

カルテンボーン:今年のレースでは、個人的な訪問にあてる時間は持てそうにありません。ですが、少なくとも1日は早く現地へ飛んで、ニューデリーを見て回ったり、さまざまなメディアイベントに出席する予定です。また、FIA(国際自動車連盟)の「モータースポーツで活躍する女性委員会」と、F1イン・スクールズのイベントにも大使としてかかわっています。

Q:インドにはどんな思い出がありますか?

カルテンボーン:何よりも、素晴らしい子ども時代の思い出ですね。私は長い間たったひとりの孫だったので、祖父母は甘やかし過ぎだというくらいかわいがってくれましたし、愉快(ゆかい)な犬を3匹も飼っていました。8歳までは、デヘラードゥーンのウェルハム・ガールズ・ハイスクールに通っていました。デヘラードゥーンで生まれたのですが、広大なインドの北に位置する、最も長い伝統を持つ古都です。素晴らしい友人に恵まれたとても幸せな時期でした。その後1979年に、両親は私により良い教育を与えようと移民することを決めたのです。

Q:ご両親は、どうしてオーストリアを選んだのでしょうか?

カルテンボーン:元々は、英語圏に新しい家を見つける計画でした。しかし、父の叔父がウィーンで原子力関係の機関で働いており、旅の途中でまずそこに滞在しました。そこが気に入ったので、とどまることにしたのです。私はすぐに、インターナショナルスクールではなく、オーストリアの学校へ入れられました。おかげですぐに言葉を覚え、なじむことができました。また、ウィーンで法律の勉強を終え、オーストリアの国籍も取得しました。それがいろいろな面で役立ちました。もちろん、オーストリアにも多くのつながりがあります。結局は、人生のかなりの部分を過ごしているわけですから。

Q:今もインド人である部分がどのくらい残っていると思いますか?

カルテンボーン:人が自分のルーツを失うことは決してないと思います。それに、私の出身がどこか、見れば一目で分かりますし。ある程度穏やかで寛容なところは、インド人らしいと言われるかもしれませんね。嫌な経験を受け流したり、将来の前向きな部分だけに注意を向けたりすることもその中に含まれます。それは、F1のように競争の激しい世界では非常に重要なことです。ヒンディー語に関しては、もう望んでいるほどうまくはありません。でも、時々子どもとヒンディー語で話すようにしているんですよ。息子は10歳、娘は7歳ですが、子どもたちにはヒンディー語を覚えてほしいと思っています。両親のほうが私よりいい先生ですけどね。

Q:F1はインドにとってどのくらい重要でしょうか。

カルテンボーン:基本的にインドでは、どんなスポーツでもクリケットに並ぶ地位を獲得するのは難しいのです。しかし、昨年の初開催以来、F1に対する興味は大幅に高まったと思います。少なくとも、チームとして経験しているメディアからの注目度が、それをはっきり示しています。インドは将来性のある国ですし、巨大な市場がありハイテクも盛んですから、素晴らしい熟練のエンジニアを擁するF1のカレンダーにインドが入るのも、もっともだという気がします。F1とインドの両者がインドGPから利益を得られると思いますね。

Q:インドGPでは、ザウバーF1チームにどのくらいのチャンスがあると思いますか?

カルテンボーン:コースレイアウトは、韓国と非常に似ていますね。低速・高速のコーナーと、かなり長いストレートがあります。しかし、インドのほうが気温が高く、ピレリが供給するタイヤも、韓国ではスーパーソフトとソフトでしたが、インドではソフトとハードタイヤです。従ってレース戦略も違ってきます。C31(ザウバーの2012年型車)にとっては、インドは理想的なコースではないものの特別問題のあるコースでもない可能性が高いと思います。ポイントを加算できる自信はありますよ。

Q:チーム代表として最初のレースウィークを迎えようとしています。この一歩はどんな意味を持つものでしょうか?

カルテンボーン:ペーター・ザウバー(前チーム代表)が信頼を寄せてくれたことを非常にうれしく思っています。この役割に就くまで、少しずつ上ってきました。2000年から社内の法律部門で責任者を務め、2001年に理事会に入り、2010年にCEOに就いて、2011年の末に社の株式の3分の1を取得しました。ペーターが日常的な業務運営から身を引くことは、もう長く予想されていたことなので、今回の一歩に対する準備も万全でした。40年以上の歴史を持ち、F1に約20年間かかわってきたこの会社を背負う責任の重さを強く感じています。

Q:チーム代表として受け入れられるのは、女性のほうが難しいでしょうか?

カルテンボーン:仕事の上では、性別はまったく関係ないと思います。それに、もうこれだけ長くかかわっていますから、女性としてより責任者として見られることの方が多いでしょう。見慣れていない人は、最初は「えっ」と思うかもしれませんが、すぐに慣れると思いますよ。

Q:仕事と家庭の2つの責任を、どうやって果たしているのですか?

カルテンボーン:普段は非常にうまくいっています。ただ時々、体制的にも心理的にも大変な状況もありますね。子どもたちとかかわる時間を作ることは、非常に重要だと思っています。レースウィーク中も、電話やスカイプで連絡を絶やさないようにしているのですが、最近はそういう手段があって助かります。家では、夫や両親、ベビーシッターが、仕事のために母親が不在になる状況を埋めてくれています。強力な支援体制があるんですよ。子どもたちも、母親のしていることを本当に誇りに思ってくれています。

Q:今シーズンここまでで、ザウバーF1チームが成し遂げてきたことについてどの程度満足していますか?

カルテンボーン:表彰台4回と世界選手権で116ポイントを獲得しているのですから、当然これまでの成果についてはプライベートチームとして誇りに思っています。もちろん、計画通りにいかなかったレース、貴重なポイントを失ったレースもありました。われわれのマシン、ザウバーC31フェラーリは、素晴らしい成功であり、ほぼどんなサーキットにおいても、競争力があることを証明してきました。グリッドに並ぶ中でも最高のクルマだと言う人もいます。残りの4戦でも、その勢いを続けられるかどうかが重要です。われわれは今も、コンストラクターズ選手権を5位で終えるという意欲的な目標を掲げていますから。ヒンウィル(ザウバーの本拠地)のチームとサーキットにいるクルー、そして2人のドライバー、小林可夢偉とセルジオ・ペレスを、全面的に信頼しています。

Q:今シーズンこれまでで、個人的なクライマックスは何でしたか?

カルテンボーン:それにお答えするには、少しの間、冷静で客観的な仮面を取る必要がありますね。とにかく感動的だったのは、可夢偉が日本で3位になった時でした。

前後の記事
最新ニュースをもっと見る  >
TopNewsの最新ニュースが読めるよ!
facebookフォロー Twitterフォロー RSSでチェック