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中野信治、世界を相手に勝利 WEC富士6時間耐久

2012年10月15日(月)23:35 pm

世界耐久選手権(WEC)富士6時間耐久レースが14日(日)、富士スピードウェイで開催され、LMP1クラスのトヨタが総合優勝を飾ったが、LMP2クラスにスポット参戦した中野信治も見事クラス優勝を果たした。

いつもはクールでストイックな中野が、表彰台の頂点で最高の笑顔を日本のファンの前で見せてくれた。

「次世代の子どもたちへ、ただ言葉だけで言うのではなく、自分の肌で世界を感じて、それを伝えていきたい」

「これまで多くの方にサポートをいただき、F1、インディ500、ル・マン24時間と世界三大レースを戦ってきたけど、まだ世界を相手に勝ててない。腕が落ちたと感じたらいつでも辞める覚悟はできている。最後まであきらめなかった者が勝つと信じている」開催直前の水曜日の練習時にそう語る中野の目は気合十分だった。

今季はル・マン24時間レースしか走れておらず、今回も3ヶ月の活動の末、ようやく日本でドライブすることができたが、初めてのチーム、初めてのクルマ、初めてのコース(サーキット改修後)、という条件でいきなり乗って簡単に勝てるほど甘い世界ではないのは中野自身がよく知っている。

WECがどれほどレベルが高いレースなのかは参加リストを見れば一目瞭然(りょうぜん)。世界中の元F1ドライバーや有望な若手ドライバーが数多く参戦しているのだ。

ジャンカルロ・フィジケラ、ビタントニオ・リウッツィ、アレックス・ブルツ、アラン・マクニッシュ、アラン・プロストの息子であるニコラ・プロスト、佐藤琢磨や中嶋一貴など、ここに全員の元F1ドライバーを記載すると参戦リストが出来上がってしまうくらい、まだ多くの国際ドライバーたちが参戦している。

中野も元F1ドライバーとして、世界レベルで戦うプロフェッショナルとして、国際舞台での優勝を目指して参戦したのだ。

レーシングドライバーは普段、毎日厳しいトレーニングをしながらも、スポンサー探しやチームとの交渉にも多くの時間を割いている。

アスリートとしての資質に加え、世界中の企業家やプロフェッショナルに、自ら積極的に営業するビジネスマン、アイデアマンとして、人間力を磨いていなければ、世界の舞台では生き残れない。アスリートとしてのストイックな部分と、英語はもちろん、国際コミュニケーション能力を磨く必要がある。

数多くのスポンサーや支援者、協力者に感謝していた中野がつかんだ世界選手権での勝利は、応援していた人も報われる瞬間だったことだろう。

国際レースで勝利した翌日も、中野は次なる目標である「ル・マン24時間優勝」に向けて「1分、1秒、無駄にしない」ストイックな姿勢でレースのために必要な活動を続け、次世代を担う若手にその生き方を伝えていく。

自動車メーカーのフルサポートもなく、大型スポンサーもなく、WEC富士6時間耐久を戦った日本人国際ドライバー、中野信治、佐藤琢磨、井原慶子。3人に共通するのは国際コミュニケーション力と、好きなことに100%集中し、苦しい時もあきらめずにやり続け、目標に向かって全力で取り組むこと。数多くの人が応援したいと思わせる人間力を彼らは日々磨いている。

多くの日本人が苦手と言う英語力や国際営業力は、世界で戦う国際レーシングドライバーとして「当たり前の仕事」だと言う。今の日本人に強く求められている国際力を、彼らはよく知っているのだろう。

だからこそ中野は、世界での優勝という目標を達成できたのかもしれない。

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