F1の英雄ジャッキー・スチュワート卿が再び、何かと問題の多いロメ・グロジャン(ロータス)のコーチに名乗りを上げている。
今年の7月、グロジャンが2012年の「クラッシュ王」と呼ばれ始めた頃、3度のF1世界チャンピオンに輝いた経験を持つスチュワートがプレッシャーと向き合う術を伝授しようとグロジャンにコーチ役を買って出た。
しかし、当時のグロジャンは「以前はコーチを雇っていたけれど、今はその必要性を感じない」と語り、スチュワートの申し出を断っていた。
あれから3カ月が過ぎた。その間にも、第12戦ベルギーGP決勝(9月2日実施)において、スタート直後の1コーナーで発生した多重クラッシュの原因を作ったとして、第13戦イタリアGP(9月9日実施)の出場停止処分を受けるなど、「クラッシュ王」ぶりがさらに加速していた。しかし、さすがに本人もこのままではまずいと感じたのか、出場停止処分後の復帰レースとなった第14戦シンガポールGP(9月23日実施)には、ロンドンオリンピックで金メダルを獲得した柔道の世界チャンピオン、テディ・リネールのコーチも務めるフランス人柔道家ブノワ・カンパルグと共に乗り込んだ。
ところが、第15戦日本GP決勝(7日実施)スタート直後の1、2コーナーでまたやらかしてしまった。最前列からのスタートだったマーク・ウェバー(レッドブル)に突っ込み、ピット送りにしたのだ。これにはウェバーも堪忍袋の緒が切れ、レース後にグロジャンへ詰め寄ったことを明らかにしている。また、ウェバーはレース後のコメントでグロジャンを「頭のいかれた野郎」呼ばわりした。
そんなグロジャンに手を差し伸べようとしているのが、ロータスのオーナー企業であるジェニイ・キャピタルと関わりのあるスチュワートだ。「ロメ(グロジャン)を助けてあげたい。とてつもない可能性を秘めたドライバーだと思うから」と話す。
また、イギリスのテレビ局『BBC』に対して次のように語った。
「ロメがまたアクシデントを引き起こすようなことになれば、トップチームはもちろんのこと、ロータスでの来季のシートすら危うくなるだろう」
さらには、「ロメが必要とすれば、いつでも手を差し伸べるつもりだ。私にはロータスとのつながりもあるからね」と加えた。
確かに、グロジャンにとって事態は深刻化している。F1の統括団体であるFIA(国際自動車連盟)に対し、「危険なドライバー」グロジャンのさらなる出場停止処分を求める声がパドック中から上がっているのだ。
「このような状況が、グロジャンのF1キャリアを危機にさらしていると思うか?」と聞かれ、ロータスのチーム代表エリック・ブーリエは、イギリス紙『Daily Mail(デイリー・メール)』に対し、以下のように答えた。
「そうは思わない。しかし、改善を期待している」