契約更新交渉がうまくいかず、ついに長年過ごしたマクラーレンを出てメルセデスAMG入りを決めたルイス・ハミルトン。この移籍劇に、マクラーレンのチーム代表のマーティン・ウィットマーシュは、チームがハミルトンを追い出したわけではないと話している。
2007年にF1デビューしたハミルトンとマクラーレンの契約が2012年末で切れるのに合わせ、以前から契約更新交渉が進められていたが、契約金額で折り合いがつかず交渉が難航していると言われていた。そして今回、ハミルトンの離脱が発表され、マクラーレンが十分な契約額を提示しなかったとのうわさが加速した。
金銭的な理由で“秘蔵っ子”ハミルトンを手放したとの批判に、ウィットマーシュは「チームは、ハミルトンを除く現役F1ドライバーの誰よりも高い金額を提示した」と反論している。
「とにかく、非常に高額のオファーを出したんだ」と強調している。
ハミルトンとの契約交渉はうまくいかなくとも、ウィットマーシュは若きセルジオ・ペレス(ザウバー)がマクラーレンへ移籍し、ジェンソン・バトンとタッグを組んでくれてうれしいと語っている。しかし、ハミルトンのメルセデスAMG加入でもっとも割りを食ったのはミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)だろう。
2006年に一度F1を離れながらも、2010年に3年契約でレースに戻ってきたシューマッハは、復帰以来いちども優勝できていなかった。F1でもっとも偉大な記録をもつシューマッハとの契約更新を選ばなかったメルセデスの親会社ダイムラーのディー ター・ツェッチェCEOは、シューマッハについて次のように話す。
「ミハエルとはいい時間を過ごした。しかし、自分たちに課した目標の達成はかなわなかった。そしてそれこそが、契約更新に不可欠だったのだ」
シューマッハのマネジャーを務めるサビーネ・ケームは、メルセデスAMGとシューマッハの契約にはサマーオプションと呼ばれる内容があったことを明かしている。
もし、シューマッハが「夏休み前に契約更新を望めば、2013年の契約を交わすことができたはずだ」とケームは『BBC』に話している。
シューマッハの移籍先に挙げられているのは、小林可夢偉が所属するザウバーだ。先日のシンガポールGPの際に、ケームがザウバーのチーム創設者ペーター・ザウバーと、CEOのモニシャ・カルテンボーンと話し込む姿が目撃されている。このうわさをケームは認めている。
「私がザウバーを訪問したのは事実です」
「彼らとは長い付き合いです。しかし、私はひんぱんにザウバーを訪れているわけではありません」
一方で、長い間シューマッハのマネジャーを務めてきたウィリ・ウェバーは「何がいけなかったのか、よく分からない」と話す。
「先月モンツァで会ったとき、ミハエルは元気でやる気に満ちていた。メルセデスAMGでうまくやっているのだと感じたよ」
「ザウバーに対して含みがあるわけではないが、シューマッハが、世界的に活動しているグループからプライベーターチームに移りたがるとは、思えないのだ」
ウェバーは、シューマッハはザウバーの申し出を受けず、メルセデスAMGの上層部や広報の顔のような役割に収まると予想している。