上位走行中のクルマが次々とトラブルに見舞われたヨーロッパGPで、約2000日ぶりのシャンパンファイトを楽しんだミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)。レース終了後に審議が入り関係者をやきもきさせたが、審議の結果、無事にシューマッハの3位が確定している。
減速を指示する黄旗が出されている区間でDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)を使用し、シューマッハのリアウイングが開いていたと主張したのは、バレンシアでのレースでシューマッハに続く4位でゴールしたマーク・ウェバー(レッドブル)だ。レース終了後であっても、結果確定前の審議では、記録タイムに特定の秒数が加算されるなどして順位が下がる可能性があった。そのため、スチュワード(レース審査員)の裁定次第でシューマッハの表彰台はく奪もあり得たのだ。
シューマッハの違反をFIA(国際自動車連盟)に申し出たヘルムート・マルコ(レッドブルのアドバイザー)は「同じ理由で、ベッテル(セバスチャン・ベッテル/レッドブル)はスペインGPでドライブスルーペナルティを受けた」と『Bild(ビルト)』紙に語っている。
しかし、当事者であるシューマッハは「ペナルティは下されないと思う。黄旗区間で僕が減速していたことは、データを見ればわかることだよ」と楽観的な予想を語っていた。
シューマッハのDRS作動を目撃したウェバーは、シューマッハに攻撃的な態度をとるつもりはない様子で、「すまないね。けれど、ルールはルールだ」と話していた。
レッドブルの主張を受けて状況を確認、審議した元F1ドライバーのミカ・サロをはじめとするFIAのスチュワード陣は、黄旗区間でシューマッハのリアウイングは確かに開いていたが、彼は減速していたと判断した。
スチュワードの公式発表には「本件は、(ベッテルがペナルティを受けた)第5戦とは大きく異なる事案である」と書かれている。なお、シューマッハはDRSが作動したまま、つまりリアウイングが開いたままになるトラブルによって、第7戦カナダGPをリタイアしており、メルセデスAMGはこの問題を完全に解決できていない可能性もある。
一方、レース終盤にルイス・ハミルトン(マクラーレン)をノーポイントに追い込んだクラッシュの責任を問われ、シューマッハと同様にレース終了後に審議対象となったパストール・マルドナード(ウィリアムズ)には、20秒のタイム加算という重いペナルティが下された。
マルドナードは、順位を守ろうとしたハミルトンが「攻撃的」であったと主張しており、ハミルトンに責任があったと考えている。しかし、元トロ・ロッソのハイメ・アルグエルスアリは、スチュワードと同じくマルドナードがクラッシュの原因だったとの見解を示している。
「マルドナードは完全にコースからはみ出していた。あの時、(ハミルトンを)追い抜くスペースはまったく残されていなかったよ」
ヨーロッパGPでペナルティを受けたのはマルドナードだけではない。レース中にフェリペ・マッサ(フェラーリ)に接触した小林可夢偉(ザウバー)には、7月8日(日)のイギリスGP決勝で5グリッド降格ペナルティが科された。そして、マルドナードや可夢偉以上に厳しいペナルティを受けたのが、ジャン・エリック・ベルニュ(トロ・ロッソ)だ。
ヘイキ・コバライネン(ケーターハム)とバトルしながら突然クルマを右へ振り、コバライネンに接触したベルニュには、めったにない二重ペナルティが科されることになった。
「事故の大きな原因をつくった」とスチュワードに判断されたベルニュに下されたのは、25,000ユーロ(約250万円)の罰金と、次戦イギリスGPでの10グリッド降格ペナルティだ。
レッドブルの姉妹チームとして若手ドライバーをレースに起用する役目を担うトロ・ロッソから、2012年シーズン開幕前に「もはや若手ではない」として放出されたアルグエルスアリは、苦戦が続くトロ・ロッソの現状について「おかげさまで、僕には関係ない話だね」と皮肉たっぷりに語っている。
この他にもレース中に、ブルーノ・セナ(ウィリアムズ)やナレイン・カーティケヤン(HRT)がドライブスルーのペナルティを受けていた。