15日(金)、世界3大レースにも数えられるWEC(世界耐久選手権)第3戦ル・マン24時間参戦ドライバーによるパレードがル・マン市内のリパブリック広場からスタートすると、沿道からひときわ大きな声援を受けるドライバーがいた。今年のル・マンへ唯一の女性ドライバーとして参戦する井原慶子(ガルフレーシング)だ。
井原は、F1チームのベネトンでレースクイーンだった1991年にレーシングドライバーへ転身。フォーミュラレースのトップカテゴリーであるイギリスF3の国際シリーズにも参戦したが、男性ドライバーを相手に体力面のハンディを負いながらの戦いだったこともあり、疲労が重なって体調を崩し、一時はレース活動を休止していた。
しかし、ル・マン24時間参戦を目指して今年1月のドバイ24時間レースで2年ぶりに本格的なレース活動を再開。このとき所属したガルフレーシングからWEC参戦オファーを受け、女性初のWECドライバーになった。
そして迎えたル・マン24時間、予選1日目には、クルマにトラブルが発生していたものの、決勝出場に向けて定められた規定周回数をこなすため、リスクを覚悟でコースインしたところクラッシュ。メカニックが徹夜の作業でクルマを修復したほか、井原自身も足りなくなったパーツを探すため、各チームを駆け回った。そのかいもあり完全な状態ではなかったが、クルマは何とか走れる状態になり、無事に予選を通過、いよいよル・マン24時間決勝へ挑むことになる。
決勝を目前に控えた井原は、次のように心境を語った。
「ついにここまでたどり着いた、というのが正直な感想です。日本とヨーロッパを何度も往復しながら、チームとの交渉、スポンサーさんとの話し合い、トレーニング、テストなど、目が回るような日々でしたが、明日、人生の大きな目標であったル・マン24時間レースへの参戦がかないます。これは、スポンサーさま、マスコミ関係者、チームスタッフなど、これまで支えていただいた皆さんと一緒に頑張ってきた結果だと思います」
「明日は、『あきらめなければ夢はかなう』という私のメッセージを、レースを通して皆さまにお伝えする事で、お返しをしたいと思います。長丁場のレース、波乱もあると思いますが、最後まで粘り強くゴールのチェッカーを目指して楽しもうと思います!」
今年で80回を迎えるル・マン24時間は、現地時間で明日、16日(土)の午後3時(日本時間午後10時)にスタートが切られる。