先週末のカナダGPでフェルナンド・アロンソが5位でゴールしたフェラーリが、同じく5位であった今シーズン開幕戦のオーストラリアGPとの興味深い比較を紹介している。
「オーストラリアGPでフェルナンドは、優勝したジェンソン・バトン(マクラーレン)から21秒遅れの5位でゴールした。この時の5位という結果はチームにとってシーズンを占う上で幸先の良い明るい材料だった。というのも、予選ではポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(マクラーレン)から1.5秒も遅く、決勝レースは12番手からのスタートだったにもかかわらず、5位入賞を果たせたのだ」とフェラーリは振り返っていた。
それゆえに、シーズン当初から「フェラーリはすでにタイトル争いから脱落した」と主張する人が少なくなかったのも事実である。F2012(フェラーリの2012年型車)に至っては、「早々とミュージアム送りになる運命にあるクルマ」と見切りをつけられる始末であった。救世主となる新型マシンのみならず来シーズンのクルマの登場すら待ちわびる声まで聞こえてきたのだ。
その後、紆余(うよ)曲折を経て、先日のカナダGPで再びアロンソが5位に入った。
チームとしては久々にポールポジションが狙える予選であり、決勝でも終盤まで優勝争いを繰り広げていた。しかし、結果はオーストラリアGPと同じ5位であったのはなぜだったのだろう。
「優勝を競い合っていたハミルトンのペースが一貫して速かったから、勝つためには大きな賭けに出るしかなかった。当初、チームは2回のピットストップを行う予定だった。しかし、それでは1位の順位を守り切ることができないと分かり、チームとドライバーは双方ともリスクが高いのを承知の上で、1回のみのピットストップを選択し、そのままライバルたちから逃げ切る作戦へ切り替えた」とフェラーリは説明する。
ギャンブルは失敗に終わり、タイヤパフォーマンスが急激に落ちてしまったのだ。しかし、ほかに1ピットストップ作戦を敢行したロータス(ロメ・グロージャン、2位)やザウバー(セルジオ・ペレス、3位)のクルマに同様のことは起こらなかった。
タイヤの摩耗と格闘していたアロンソの後ろでセバスチャン・ベッテル(レッドブル)も同じ問題を抱えていた。フェラーリも「もしベッテルが2回目のピットインを行った際に、フェラーリが素早く反応していたら4位を確保できていたかもしれない」と判断ミスを認めている。
結果的に今回のフェラーリの作戦変更が失敗に終わったことは誰の目から見ても明らかである。しかし、タイトル争いにおいて致命的なダメージを受けなかったことは不幸中の幸いだ。カナダGPに勝利し、一気に1位へ躍り出たハミルトンをアロンソは2ポイントのきん差で追っている。
「ポイントリーダーの座を明け渡した形にはなったが、7戦が終了した時点で1位であってもそれはあまり価値が無い。重要なのは、11月25日に行われる最終戦ブラジルGPのレース後に1位でいることだ」とフェラーリは述べた。
レースごとに着実に進歩を見せるフェラーリ。明確な目標達成に向かってひた走る。