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スポーツか見せ物か? 不可解な今季のF1をめぐる議論

2012年05月16日(水)19:12 pm

第5戦スペインGPを終えてもまだ、不可解だが魅力的な2012年シーズンをめぐる謎は解けていない。

スペインGPは、レースごとに強いチームが変わる今年のF1を象徴するレースになった。初表彰台にして初勝利を手にしたウィリアムズのパストール・マルドナードは、以前は実力ではなく持参金でレースシートを手に入れた「ペイドライバー」だと揶揄(やゆ)されていた。

ウィリアムズも、昨年は年間でたった5ポイントしか獲得できず、チーム史上最低ともいえる成績だった。ほかにスペインGPで上位に入ったロータスやザウバーも、昨年は中団グループのチーム。逆に、トップチームのレッドブルは6位と11位、マクラーレンは8位と9位でスペインGPを終えた。

この結果、ドライバーズランキングの首位には、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)とスペインGPで2位になったフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が、同点で並んでいる。

結果的には圧勝した昨年と同様にランキングトップを守っているベッテルだが、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のインタビューで、レースウィークが始まる前にスペインGPの勝者はウィリアムズのパストール・マルドナードだと教えられていたとしたら、どうしたかと聞かれると、こう答えた。「彼らに大金を掛けていたね!」

「配当は悪くなかったんじゃないかな」とベッテルは笑顔で言う。

実際、イギリスの大手ブックメーカー『William Hill(ウィリアム・ヒル)』では、スペインGPが始まる前に、マルドナードが優勝する掛け率を500倍にしていた。

ウィリアム・ヒルの広報担当者によると、予選前にマルドナードに10ポンド(約1300円)以上賭けていたのは、たった2口だったという。

「きっとウィリアムズは、どうしてここで勝てたのか分かっていないよ」というマクラーレンのジェンソン・バトンの言葉を『Guardian(ガーディアン)』紙が伝えている。

開幕4戦で優勝したのは、バトン、アロンソ、ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)、ベッテルの4人。第5戦スペインGPで5人目の勝者が誕生したわけだが、今後優勝する可能性のあるドライバーは、まだまだいる。

F1の専門家によるここ数週間の報道をよく見てみると、ルイス・ハミルトン(マクラーレン)、マーク・ウェバー(レッドブル)、キミ・ライコネン、ロメ・グロジャン(ともにロータス)、ミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)、セルジオ・ペレス、小林可夢偉(ともにザウバー)のいずれもが、今後の優勝候補と広く伝えられている。

さらに、チームメートが今シーズン優勝していることを考えれば、不振の続くフェリペ・マッサ(フェラーリ)とブルーノ・セナ(ウィリアムズ)の名前もリストに加えていいだろう。

「こうなったら、カーティケヤン(HRT)に賭けよう!」と『The Sun(サン)』の記者クリス・ホックリーは書いている。

こうした状況に対しては、ファンの間でも意見が分かれる。F1を見せ物ではなくスポーツとしてみる純粋主義派は否定的だが、史上空前の激戦に驚嘆し歓迎しているファンもいる。

「見せ物がスポーツを支配」とパリの『Le Figaro(フィガロ)』紙は伝えている。

「チームでさえ、だれがウサギでだれがカメになるのか、どのサーキットのことも確信が持てずにいる」と『The Sun(サン)』のホックリーは書いている。

その若さに似合わず、自分も戸惑っている純粋主義派だというベッテルは、「今の状態はほんとうにクレイジーだよね」と『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に話している。「今起きていることは、僕たちにも説明が難しいよ」

同じくランキングトップのアロンソは、純粋主義の側に立つ。『El Pais(パイス)』によると、アロンソはこう語った。「もちろん観客にとっては魅力的だよね。モナコGPに向けて、優勝争いができるのか、ポイント圏外(11位以降)になってしまうのか、僕たちにも分からないんだから」

「でもある意味、F1で11年走ってきて、今フェラーリにいるけれど、もう少し安定してほしいね」とアロンソは本音をもらしている。

3度のF1王者に輝いたジャッキー・スチュワートは、「信じられない状況だ。これは新しいルールやタイヤがもたらした結果だと思う。いろいろな要素がからんでいる」とスペインの『AS』紙に話した。

マルドナードのレースエンジニアのセビ・プホラールはこう話す。「今起きていることは、このタイヤのおかげで、予算が一番多くないようなチームでも本当にいい結果を得る候補になれるということだ」

「その理由は、今最も重要な要素が、いいセットアップと温度に関する少しの運だからだ」とプホラールは付け加えた。

F1にタイヤを供給するピレリは、波乱のシーズンの立役者として、批判と称賛の両方を浴びている。

「ピレリは大胆で勇気がある」と『The Sun(サン)』のホックリーは述べている。「あっと言う間にすり減ってしまうようなタイヤを作ることが、メーカーとして容易なはずはない」

ピレリのマルコ・トロンケッティ・プロベラ社長は悪びれた感じを見せていない。

「われわれは、チームが求めてきたものを提供しているんだ。簡単なことではなかった」

「われわれのエンジニアはたぐいまれな仕事をしている」とプロベラ社長は胸をはっている。

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