長きにわたるF1の歴史において、最も論争を引き起こしたであろう今年のバーレーンGPが閉幕した。そして今、その開催によって生じた結果を、F1界が振り返っている。
反政府のデモが続いていることから、中止を求める声が多かったバーレーンGP。しかし、運営側は開催を強行した。だが、バーレーンGP期間中に行われたF1開催に対する抗議活動で死者が発生するなど、バーレーンGPは多くの問題を残した。
バーレーンでの騒動に関して多くのドライバーが沈黙を守った。しかし、以前フォース・インディアのドライバーを務め、現在は何の契約にも拘束されていないエイドリアン・スーティルは、現地入りせずにすんで良かったと認めている。
『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュラント)』に対してスーティルはこう語っている。
「こういった状況下では、行かない方が良いだろう」
「一方では(バーレーンへ行くという)決定が下されたというのに、その一方で、開催の地バーレーンには問題が山積みだというのは本当に難しい状況だよね」
しかし、バーレーンに親類が住んでいるレッドブルのリザーブドライバー、セバスチャン・ブエミは、この意見には全く賛同していない。
オーストリアの『Servus TV(セアヴスTV)』において、ブエミはこうコメントした。
「僕は月曜日(16日)に到着したんだけれど、特に問題はなかった。2年前よりも、少しだけ警察官の数が多かったくらいかな。でも僕の身には何も起こらなかったよ」
しかしながら、フォース・インディアおよびザウバーは、サーキットからホテルへ戻る際、抗議活動に巻き込まれて火炎瓶も間近で目撃していた。
また、ケーターハムのスポークスマンを務めるトム・ウェブが、イギリスの日刊紙『The Sun(サン)』へ次のように語っている。
「渋滞のせいで(レンタルの)ライトバンが減速した際、メインストリートの横でボトルを振り回す地元の若者の姿を、乗車していたクルーたちが目撃した」
現F1王者であり今年のバーレーンGP優勝者でもあるセバスチャン・ベッテル(レッドブル)も、週末を通じてパドックには緊張感が漂っていたことを認めた。ドイツの通信社『SID』に対して、ベッテルは次のように話している。
「皆にとって難しい状況だった。それでも、僕たち(すべてのF1関係者を含む)に何も起こらなくて良かったと思う」
それに加えてイギリス紙『Telegraph(テレグラフ)』は、次のようなベッテルの言葉を引用した。
「将来的には、もう少し安全な状態でこの地に来られるようになると良いな」
また『Reuter(ロイター通信)』によると、バーレーンの国有企業が大株主であるマクラーレンでは、メインスポンサーのボーダフォンがバーレーンにスタッフを送らず、マクラーレンに対して懸念を示していたそうだ。
しかしF1スポンサーシップの専門家であるジム・ライトがイギリス紙『Guardian(ガーディアン)』に対して語ったところによると、F1自体はイメージ損失を免れなかったものの、スポンサー的には満足のいくものになるとのことだ。
「ほとんどのチームが、難しい決定を非常にうまく行った。そのおかげで多くの人々が喜んだろうし、チームとの間に築き上げた関係を喜ばしく思うことだろう」とライトは語った。
テレビ視聴者の側も何の被害もこうむることなかった。イギリスの『BBC』によれば、むしろその数は開幕戦オーストラリアGPや第2戦マレーシアGPよりも増加したということだ。なおドイツにおいても同様の数字がはじき出されている。
それにもかかわらず、今回のバーレーンGPに対する批判は依然として残ったままだ。
元F1ドライバーのアレックス・ザナルディは、イタリアのスポーツ紙『Tuttosport(トゥットスポルト)』に対してこう語る。
「きちんと考える良い機会なんじゃないかな。大規模なスポーツイベントというものは、それを開催するに値する政府にのみ割り当てられることを確かなものにしないといけないね」
「エクレストン(バーニー・エクレストン/F1最高権威)は素晴らしい人物であり、F1をF1たるものへと育て上げたことは間違いない。しかし、何が何でもレースを行わなくてはならない、というわけではないだろう」