2012年は最初の4戦で4人のレース優勝者が生まれたが、来月のスペインGP(5月13日決勝)がどんなレースになるのかはまったく予測できない。
ドイツのニュースサイト『Netzeitung』には「確実なことは予測不可能ということだけ」という見出しが出た。
F1はこれまで、比較的結果を予測しやすいスポーツと思われてきたが、今シーズンはまったく違う。これまでの4戦で優勝したのは、マクラーレン、フェラーリ、メルセデスAMG、レッドブルの4チーム。さらにロータスとザウバーも優勝できるペースを見せている。
「記録によると、最初の4戦で別々の4人が優勝したのは、9年前だ」
「それだけじゃない。別の4チームが優勝したのは、29年も前にさかのぼるんだ」とフェラーリのチーム代表ステファノ・ドメニカリが話した。
2012年のF1が史上まれに見る大激戦になっている理由として、調子の良いチームが多いことと、6人ものワールドチャンピオン経験者がいることが挙げられる。しかしドメニカリは、最も大きな要因はピレリタイヤにあると考えているようだ。
だが、この点に不満を持つ関係者もいる。F1で7回チャンピオンを獲得したミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)は『Bild(ビルト)』紙に対し、今年のタイヤはあっと言う間に性能が低下してしまうため、コーナーで激しい走りをすると、タイヤのゴムが「飛び散っていく」と述べている。
シューマッハは、「僕たちはまるでセーフティカーみたいに走っているんだ。満足できる状況なわけないだろう」と述べ、全力で走れずにいるのはタイヤのせいだと不満を述べた。
この非難を、ピレリのモータースポーツ責任者ポール・ヘンベリーは意に介していない。ピレリは「レースを刺激的にするタイヤを作っている」だけだとヘンベリーは言う。
「それぞれのドライバーを考慮に入れてはいられない」
「ダメにならないタイヤを作ることくらい、われわれには非常に簡単にできる。そうすれば、トップ10のドライバーが決勝でもトップ10になるだろう」
「だが、退屈な行進など誰も見たがらない」とヘンベリーは反論している。
これと同じ意見が、新聞の見出しにも表れている。スイスの『Blick(ブリック)』紙は「ピレリが退屈を一掃」という見出しを掲げた。
シューマッハと同じメルセデスAMGのニコ・ロズベルグもチームメートとは違う考えだ。ロズベルグは、第3戦中国GPでF1初優勝を飾っている。
「本当に訳が分からないよね。次のサーキットで誰が一番速いのか分からないんだから」というロズベルグのコメントを『DPA通信』が伝えた。
「F1はほかのどんなスポーツとも違うものになったみたいだ」
「確かに、1周だって全力で走ることはもうできない。氷の上を走っているような状態になることも多い。でもそれに挑戦するのは面白くてすごくやりがいがあるよ」とロズベルグは前向きだ。
ファンにとってF1が面白くなっているのは間違いないが、チームはこうした状況に早く適応しなければならない。イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』紙は、バーレーンGPでレッドブルのセバスチャン・ベッテルが優勝したことを受けて、それまで精彩を欠いていたチャンピオンチームのレッドブルが、再び強さを見せるのではないかと伝えた。
しかし、レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコはそう考えてはいないようだ。「ライバルが誰なのかすら分かっていないんだぞ!」とマルコは反論している。