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メルセデスAMGのFダクト、コピーは困難

2012年04月06日(金)14:01 pm

今シーズン好調な出足を見せたザウバーが採用している優れた排気系の処理を、チャンピオンチームのレッドブルが2012年シーズン開幕直前にコピーを試みたことは周知の事実である。

『O Estado de S. Paulo(オ・エスタド・ジ・サンパウロ)』の記者リビオ・オリッキオによると、ザウバーの新車は、水や空気といった流体は物体に触れるとそれに沿って流れていくという、“コアンダ効果”と呼ばれる流体力学の思想を巧みに利用しているという。

FIA(国際自動車連盟)が2012年シーズンからブロウン・エキゾースト・システム(※)の使用を禁止したことを受け、ルーマニアの空気力学の第一人者であったアンリ・コアンダが発見し、その名に由来しているコアンダ効果を利用することで、ザウバーは排気ガスを合法的にディフューザーへと導いているとオリッキオ記者は指摘している。

次にザウバーの画期的な排気系処理の模倣を試みるチームは、目下フェラーリであると考えられている。

ところが、メルセデスAMGが今シーズン投入した新型のFダクトに関して、レッドブル、フェラーリ、そしてロータスの態度は一変する。そもそもFダクトとは2010年に流行したシステムで、クルマに設けられた小さな穴から空気を取り込み、それをリアウイングに吹き付けることによってリアウイングの空力効果を弱め、主に直線区間の速度を上げるための技術だった。そのFダクトは2011年シーズンから使用が禁止されている。だが、メルセデスAMGは現行のDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)のルールを利用し、2012年仕様車W03の後部から取り込んだ空気が車体前部に向かうよう空気の流れを変えることで、Fダクトと類似した効果を得ていると見られている。

このコンセプトによって、直線区間の最高速度だけではなく、クルマの操作性能も大幅に向上するようだ。

FIAのF1技術部門責任者であるチャーリー・ホワイティングは、ザウバーもメルセデスAMGも違法行為は行っていないと明言した。しかし、前記の3チームはメルセデスAMGのFダクトに関しては不満を持ち続けており、次戦中国GP(4月15日決勝)前に正式な抗議を行う可能性もあると揺さぶりを掛けている。

レッドブルのドライバー育成責任者でコンサルタントでもあるヘルムート・マルコは、「とても責任感の強いチームであるロータスが、(メルセデスAMGの)Fダクトがルール違反であるという2つの理由を突き止めた」と説明している。

結局のところ、ザウバーとメルセデスAMGの発明に対する態度の差は、その技術を模倣する難易度の違いが原因になっているのかもしれない。

オリッキオ記者はレッドブルの最高技術責任者エイドリアン・ニューイがマレーシアで「メルセデスAMGが導入した、クルマ後部から取り込んだ気流をクルマの前部に戻すという、(F)ダクトを使った空力処理を考慮するとなると、クルマの設計に関するプロジェクト全体を見直す必要がある」とコメントしていたと指摘している。

※ブロウン・エキゾースト・システムとは、高温で気流の速い排気ガスをクルマの最後部に装着されているディフューザーという空力パーツに流し込むことによって、より大きな空力効果を引き出す技術のことで、レッドブルが他チームに先んじて導入し、昨シーズンは多くのチームが採用したが今シーズンからは使用が禁止されている。

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